前回のタヌキの特集が大好評につき、今回はキツネにバトンタッチ。当エリアとキツネの関係はどーなってるの?

私はキツネ市長
新座市の姉妹都市フィンランドのユバスキュラ市。首都ヘルシンキから空路で小1時間のところにあります。そのユバスキュラの市長が一昨年新座来訪の折、野火止用水視察の途、本多緑道にあるお稲荷さんでふと足を止めました。
「コレ何ですか」。案内役の藤井孝文さんが説明すると一同がドッと湧いた。見れば市長が自分を指して笑っている…。
なぜかといえば市長の名前はPEKKA KETTUNEN(ペッカ ケツネン)さん。フィンランド語のKETTU(ケツ)はキツネ、NEN(ネン)というのは人の名前につけて、ほら、ノルディックスキーのジャンプにはニッカネンとかアホネンとかネンのつく選手がいるでしょう。ですから市長は「キツネさん」だったわけです。一行はお稲荷さんに丁重に参拝したとか。フィン語と日本語でキツネの発音がそっくりでビックリ!このキツネがとりもつ縁でますます両市の友好が深まること間違いなし…ですね。
ちなみにフィンランドではキツネは農作物を荒らしたりする困り者。「ロンドンのキツネ」は有名ですが、フィンランドでは都会でキツネを見かけることはないそうです。

狐の大根取り入れ図絵馬

西大泉のライフそば諏訪神社(練馬区西大泉3-13-3)には、大根の産地練馬の土地柄にふさわしくキツネが大根の取入れをしている絵馬があります。地元の農家が奉納したもので練馬区の文化財指定。拝観できるのは境内の稲荷神社社殿にある実物大のレプリカですが、拝観の際は社務所に申し出てください。

キツネノカミソリ群生地
一般公開されたのは今年が初めてというまだ穴場的存在。民間団体のキツネノカミソリ保存会(千葉庄三会長、会員80名)の十数年にわたる苦労が実って遊歩道が設けられ、観賞態勢が整いました。約1万uに数万株、それはそれは壮大なスケールです。ヒガンバナのきんちゃく田にも匹敵するほど。キツネノカミソリはヒガンバナ科の野草で、葉の形がカミソリみたいで花の様子がどことなくキツネを思わせるためこの名がついたといわれています。早春に葉が伸びだし、ニッコウキスゲにも似たオレンジ色の花が咲き揃うのが8月中旬。観賞期間は約2週間。これからが楽しみなキツネの散歩道です。  新座墓苑内(新座栄行バス公民館前下車徒歩3分)

里神楽のキツネ
江戸時代に野火止氷川神社の宮司を務めた石山哲夫家は、200年以上も前から庶民に神楽舞を代々伝承している武州里神楽の家元です。数ある演目のうちキツネが出てくるのは「稲荷山」。穀物の神である稲荷大神は、千箭(ちのり)に穀物を荒らす害虫(鬼)を退治するように命じる。稲荷大神から弓矢を渡された千箭はみごと害虫をこらしめます。
市内大和田氷川神社や練馬区石神井氷川神社はじめ近隣の神社で奉納されますが、特に稲荷神社のときは稲荷山を最初に演じることが多いようです。新座市無形文化財指定。

狂言におけるキツネ
野村家(練馬区)、和泉家(板橋区)といった著名な狂言師が住んでいるプチぶんか村エリアには熱烈な狂言ファンもたくさんいます。その一人大泉学園町のYOKOさんに狂言におけるキツネについて話を聞きました。「狂言を披(ひら)く順番は難易度によって7段階に分かれています。その最終レベルにあたるのが釣狐(つりぎつね)。修業を表す〈狂言は猿に始まり狐に終わる〉という言葉があるほど狐は重要な役どころなのです」。

キツネという生きもの
食肉目の獣。犬に似るが身体は細く、尾は太く、口は突出、耳は長く尖り、毛色はふつう赤黄色。山野に穴居し、小獣を捕らえて食う。古来人をだますと称され、また稲荷神の使いなどといわれる。皮は敷物・襟巻きなどに用いる。きつ。くつね。(「広辞苑」より)
埼玉県の野火止台地のホンドキツネは、Vという絶滅に近い危急種。もちろん都市で見かけることはほとんどありません。タヌキが人間の近くで生きているのに対し、キツネは都市化の激しい地域にはとても住めないようです。
※私はキツネを見たことある…という方は当ホームページの掲示板までお知らせを。

信仰の中のキツネ
全国に4万はあるという稲荷神社の総社は京都の伏見稲荷大社。渡来豪族の秦氏にまつわる「稲成り」の説話が転じて稲荷に。五穀豊穣、商売繁盛の神として厚い信仰を集めてきました。本来キツネとは無関係の稲荷神社はいつしか眷属(従者)信仰の対象となり、神の使いとしてのキツネが民衆に受け入れられていきます。そんなわけで、稲荷神社には狛犬でなく巻物や宝珠をくわえた1対のキツネが座して守りを固めているのです。

東伏見稲荷神社(西東京市)
昭和4年、京都から分霊を勧請した東国唯一の伏見稲荷神社。朱塗りの本殿が美しく、裏手には京都にならって十数の小さな社が点在し、「お塚」と呼ばれ親しまれています。
キツネの好物油揚げを奉納するための籠はネコやカラス除け。初詣は三が日で約10万の人出、100軒の露店が並び賑わいます。社務所で売っているキツネ絵馬にもご注目。東伏見稲荷神社への案内板は片山交差点に立っています。
西武新宿線東伏見駅の大鳥居から桜並木の表参道を歩いて7分 042-61-1125

出世稲荷神社
秀吉の時代から「出世稲荷」の勧請が盛んに行われ稲荷信仰が普及。川越街道に近い練馬区旭町の出世稲荷は、江戸時代に柳沢吉保、松平信綱など後に出世を遂げた川越城主が参勤交代の折に祈願していたことからの名称とも。出世したい人は一度お参りしてみては?ご利益があったら編集部にそっと教えてください。  練馬区旭町3-17 成増駅から徒歩10分

稲荷会館
新座市馬場の稲荷神社敷地内に昭和25年頃に建てられた地域集会所。お稲荷さんの土地だから建物も「稲荷会館」。今も社があり、室町時代では埼玉県内最古というお地蔵様も祭られています。これは月待講という信仰の名残。毎年9月に地蔵祭りが行われます。集会所は有料ですが一般解放しています。\1500〜2000 048-478-5745(飯野)

長久保山のキツネ
「練馬の懐かしい炉端談話」(加藤喜平著・創栄出版刊)に収められている民話の一つ。朝霞膝折から大泉下小榑村へ行く途中ある男が長久保山でキツネを見かけ、そのキツネが最初葉っぱで風呂敷、竹と藤蔓で重箱、虫で饅頭を作るのを目撃。さらにキツネは目のさめるような衣装を着た、輝くばかりのお姫様に化けて若様の家を訪ねていきます。男は「キツネが化けるところをすっかり見られるとは運のいいことだ」と最後まで二人の事の次第を見届けようと節穴から覗きますが、覗いた節穴が実は…馬の尻の穴だったんですね。ちょっと品が悪くてゴメンナサイ。結局最初から男はすっかりキツネに騙されていたのでした。もう狐狸狐狸…という話。

瘡守(かさもり)稲荷
「にいざの民話」(新座民話の会)からも一つ。新座市西堀の西屋敷周辺にたくさん棲んでいた野ギツネは悪さをするため人間に嫌われていました。そこで長老キツネが何かよいことをしようと、そのころ流行病だった腫物に効くドクダミの葉を病人のいる家に置いて歩き、その結果病はすっかり消えてしまいました。村人たちもキツネのおかげと気づき、お礼をしようとしましたがとうとう長老キツネは姿を現わさなかったので、神社に祭って供養した…という話。

稲荷山古墳とキツネ
さきたま古墳群のなかでも国宝「金錯銘鉄剣」が出土したことで有名な稲荷山古墳は、墳墓上に稲荷社があったことが名称の由来。周りが一面の田んぼで古墳がこんもりとした森だった今から30年以上昔だったらキツネが出たかも。古墳のある行田市内にはキツネ面をつけた男の子が踊る「きつねおどり」の銅人形があり絵葉書にもなっています。この絵葉書は行田市立郷土博物館で買うことができます。

狐の嫁入り行列
人などいないはずの山に提灯のような明かりが点々とすることがあります。それが狐火で「狐の嫁入り行列」といわれるもの。狐火が多く見られる年は豊作とか。会津に近い新潟県津川町では麒麟山でよく狐火が見られたことから今も毎年5月3日に「狐の嫁入り行列」の行事を開催。キツネのメーキャップをした100人もの行列が人々を幻想の世界に誘う不思議な一夜です。行事についての問い合わせは津川町役場産業交流課商工観光振興係へ。 02549-2-3111 http://j-p.net/~tsugawa/

黒澤映画「夢」から
「こんな夢を見た」で始まるオムニバスの第一作目。日が照っているのに雨が降っている…こんな天気の日に「キツネの嫁入り行列が出る」というそうですが、主人公の少年が森で見たものはまさにその行列でした。シーンとした森の中をキツネたちが行く。人間扮するキツネが一斉にキッと振り返る動作が妙に怖い。

お知らせ
<鑑賞の手引き>
鑑賞の手引き 牧神の笛パンフルートとピアノによる
♪クリスマスコンサート♪

パンフルートはギリシャ神話の牧神パンに由来し、現在はルーマニアの伝統楽器として知られています。竹や葦などのパイプを音階順に並べ吹くというシンブルな構造の管楽器ですが、その音色は一度聴いたら決して忘れることのできないような心に響く音色です。パンフルートの大束晋さんは新座市野火止在住。上智大在学中にこの楽器に出合い、その後ルーマニアにおいて奏法を学びました。現在は数少ない本格的パンフルート奏者として活躍中。
12月16日(土)保谷市(1/21以降西東京市)のひばりが丘教会でクリスマスコンサートが催されます。
※詳細はぶんか情報欄を
♪パンフルート:大束晋、ピアノ:直江みや子  ♪曲目/コレルリのヴ ァイオリンソナタF-dur、クリスマスの讃美歌や聖歌、ルーマニアの民謡など http://www2.ttcn.ne.jp/~doina-sum



<ワールド>
線上のクリスマス
もしお手元に世界地図があったら南太平洋上をご覧ください。この冬話題のキリバス共和国、見つかりましたでしょうか? 日付変更線際にあるため、21世紀をまっ先に迎える国として注目されています。新世紀の新年をキリバスで迎えようという人々でエアチケットが早くも売り切れ状態とか。
キリバスにはギルバート・フェニックス・ラインの3大諸島があり、そのうちライン諸島のメインは「クリスマス島」。サンゴ礁島としては世界最大規模で、島名の由来は、島を発見したキャプテンクックがここでクリスマスを過ごしたから。島北端にはなんと日本の宇宙開発事業団のトラッキングステーションがあって、そこでは日本から打ち上げた衛星を追跡しているのだそうです。
北緯1度、まさに赤道直下、ライン上のクリスマス。決して雪の降らない南の島のクリスマス。少しは熱くなれましたか?

<教室ガイド>
紅茶とケーキの教室  
Crescent (クレセント)

子供たちに簡単なおやつが作れたら…との思いをきっかけにお菓子づくりにはまってしまい、キハチのパティシェに習ったりお菓子研究家のところで指導認定を取得したり10年以上習いつづけている木野村さん。洋菓子を通して紅茶の勉強やフラワーデザインの資格も取ってしまいました。洋菓子だけでなくトータル的に指導、シュガークラフトや和菓子に至るまで、いわばお菓子作りのエキスパートです。現在自宅と三原台、大泉学園地区区民館、和光中央公民館を舞台に大活躍。「紅茶をおいしく飲みながら、ホッとできる空間を提供していけたらうれしい…」。お菓子づくりの輪がだんだん広がっています。講師/キノムラヒロコ 大泉学園町7-19-30
入会金¥2000 月1回レッスン¥3000 (03-3925-7801

ティータイムのお菓子>
かつら(ふるさと)柚子ケーキ
「 あ し た 」

日本茶にも紅茶にもコーヒーにもほどよくマッチするこの柚子ケーキは、和光が生んだ清水かつらの名曲「あした」にちなんで名づけられました。次世代をになう子どもたちの幸せを託した童謡詩人から想いを同じくする製造メーカーの和魂洋才の技に生かされ、発売元「童謡童話でまちづくりの会」を経て東武東上線和光市駅前の「美好」で販売されています。やさしく郷愁を誘う柚子の香りと歯ざわり…この楽しさを味わっていると「叱られて」「靴が鳴る」「あした」などかつら童謡のメロディーが聞こえてくるようです。お友だちとともに、また家族で、冬の寒さのなか柚子ケーキのぬくもりを感じてみてはいかが。プレゼントしてもきっと喜ばれることでしょう。
1本箱入り¥1300 美好(048-468-1747 月休