■特集 秋散歩 啄木を歩く


 秋たけなわ。気持ちのよい秋晴れの日に、街歩きはいかがですか?今年は石川啄木没後100年。文京区に住んだ啄木の足跡をたどるプチ散歩のご案内です。


『人生の旅人・啄木』
お供は、本号エッセイを書かれた岡田喜秋さんの本。20代で渋民村を訪ねるなど啄木には格別の思いを抱いてきた岡田さん渾身の一冊で、没後100年の今年上梓されたもの。この著作と氏の助言をもとに啄木ゆかりの地を歩きま
しょう。

文京区に啄木を訪ねて
 一葉、鴎外、賢治、漱石…など文京区ゆかりの文学者は180超。でも本紙ではあえて石川啄木に絞ります。必ずほかの文人の足跡にも出くわす…それがこのプチ散歩のおもしろいところ。啄木も当時多くの文人と交流していました。

初上京から終焉まで
 盛岡中学の卒業直前で退学した啄木は、文学で身を立てようと明治35年単身上京。住んだのは、小日向。今宮神社脇の八幡坂を上った鳩山会館裏手あたりの下宿でした。「室は床の間つきの七畳。南と西に橡(えん)あり。眺望 大に良し。」
 啄木は与謝野鉄幹夫妻に会うなど文学に燃焼しますが、生活難と病苦のため翌年2月、迎えに来た父親に故郷に連れ戻されます。その後渋民尋常高等小学校の代用教員となり、さらには北海道で新聞社に勤めながら転々としたのち、明治41年再び上京し同郷の金田一京助を頼って本郷の赤心館に止宿。家賃が払えず二人は近くの蓋平館別荘に移り住むことに。翌年から朝日新聞社の校正係の職を得た啄木は、上京した家族とともに本郷弓町の喜之床という理髪店2階に間借りし、すぐれた作品を残します。44年病んで小石川久堅町に移り、翌45年26歳の若さで病没。啄木終焉の地は茗荷谷駅の東、播磨坂近く。今はマンションに説明板があるのみです。

本郷三丁目交差点から
 先ず立ち寄りたいのが「文京区ふるさと歴史館」。資料を揃えたり、予備知識を得たり。啄木に関しては鴎外宛のハガキ(複製)等が展示されています。歴史館への途中、春日通り左側にある「喜之床」(現アライ)を見逃さないように。
ホームページ「文京区ふるさと歴史館」→http://www.city.bunkyo.lg.jp/rekishikan/

赤心館(せきしんかん)

蓋平館別荘(がいへいかん)(現・太榮館)

啄木 東京の歌碑めぐり
湯島・切通坂
   二晩おきに
   夜の一時頃に切通の坂を上りしも
   勤めなればかな。








上野
   ふるさとの 訛なつかし
   停車場の 人ごみの中に
   そを聴きにゆく











浅草
  浅草の夜のにぎはひに
  まぎれ入り 
  まぎれ出で來し
  さびしき心

 等光寺の門を入ってすぐ右手。親友土岐善麿の実家であるこの寺で啄木の葬儀が行われたことから『一握の砂』収録のこの1首と胸像を刻んだ歌碑が立ちます。




銀座
   京橋の 瀧山町の新聞社
   灯ともる頃の
   いそがしさかな 
 
 朝日新聞社に勤務しながら『一握の砂』『悲しき玩具』詩集『呼子と口笛』等の名作を出版。歌碑は啄木没後60年記念として朝日新聞社跡に設置。




ホームページ「いわて銀河プラザ」→http://www.iwate-ginpla.net/

プチぶんか村おすすめプチ散歩コース
 有楽町線江戸川橋駅…今宮神社…八幡坂…石川啄木初の上京下宿跡…石川啄木終焉の地…丸ノ内線茗荷谷駅=本郷三丁目駅…喜之床…文京区ふるさと歴史館…赤心館跡…蓋平館別荘跡(歌碑)…(菊坂下→本郷通り→本郷三丁目…湯島天神北・切通坂(歌碑)…御徒町…上野(商店街入口歌碑、駅構内歌碑)=銀座線田原町駅…等光寺(歌碑)=銀座線銀座駅…いわて銀河プラザ…朝日ビル前(歌碑)…有楽町駅
※1日で回るのは健脚向き@本郷三丁目界隈A初上京の地と終焉の地B銀座・浅草・上野歌碑めぐりの3回に分けて歩くとよいかもしれません。ホームページの地図を参考にしてください。(…徒歩 =地下鉄)








名取春仙
 『一握の砂』の装丁を手がけたのは同じく朝日新聞に勤めていた名取春仙。漱石などの挿画も担当。版画家・浮世絵師でもあった春仙の美術館は南アルプス市に。


春仙美術館


啄木 ふるさとの風景

<表参道ヒルズ>
夫佐子はな 10/24〜29
 桜の大木がある学園町の閑静な住宅で、桜を主とする多彩な花々が生まれています。40年にわたり布を選び染めて花づくりをしてきた斉藤夫佐子さんの個展。「楽しんで作っているので、みなさんにも見て楽しんでいただければ」。気負いのない言葉通り、気品ある花がやさしく語りかけます。素材や工程について本人から直に聞けるチャンスでもあります。※情報欄参照

<ギャラリーFUURO>
山野邊 孝展  10/12〜19

津波で町が壊滅した福島県いわき市久ノ浜で、被災しながらも作陶を続けている陶芸家の山野邊さん。全国で個展を展開している氏が、当エリアにも近い目白のギャラリーFUURO(ふうろ)で作品を披露します。被災地支援の一環として、読者のみなさまにもぜひ足を運んでいただければと思います。こうした形で支援をするのはいかがですか? ※広告欄・情報欄参照

<サンアゼリア>
シネサロン・和光 ≪わが母の記≫ 11/4
第35回モントリオール世界映画祭審査員特別グランプリ受賞!! 昭和の文豪・井上靖が故郷伊豆を舞台に綴る自伝的小説の映画化。母親に「捨てられた」との思いを抱きながら生きてきた主人公・洪作。老いて徐々に記憶を失っていく母と向き合う中、唯一消されることのなかった真実。50年の時を超え、母の口から語られたその真実とは?役所広司、樹木希林など迫真のキャスティング。海外も絶賛した日本の家族の絆を謳い上げた感動作。移り行く四季の美しい映像も楽しみ。※枠外・情報欄参照

<サンアゼリア>
加登萌々子ヴァイオリンリサイタル 10/27

国立モスクワ音楽院首席卒業という経歴を持つ加登さんは大泉学園町在住。国立埼玉病院でボランティア演奏もしている地域を愛する若手演奏家です。ぜひ聴いてください。アイケイミュージック070-6449-2131に申込むと割引適用。※情報欄参照

<NEW>
「ふるさと新座館」この秋オープン

文化の殿堂がJR新座駅近くに建設されています。地上2階、地下2階、地下に240席のホールを設け、ほかに観光インフォメーション、農産物直売センター、野火止公民館を含む複合施設として11月1日にオープン。同3日には「ふるさと新座館建設検討委員会」のメンバーでもあった佐々木真さん(片山在住、日本フルート協会会長)のこけら落とし演奏をはじめオープニングイベントが目白押し。同館は、市外の方でも利用可能。
新座市野火止6-11-48 JR武蔵野線新座駅から徒歩10分 
駐車場約70台 開館までの問い合せは
「ふるさと新座館建設推進室」
048-477-1111内線1172へ。

<石神井ふるさと文化館>
生誕100年「檀一雄展」 11/29〜12/24 

練馬区石神井に長く住んだ直木賞作家、檀一雄(1912〜1976)。「リツ子・その愛」「リツ子・その死」などの名作を執筆しましたが、「火宅の人」のイメージで「無頼派」「破滅型」と無軌道のレッテルだけで見られがちな作家です。でもその文章を再度読んでみれば、みずみずしい文体、心にしみる風景描写、生きとし生けるものへの賛歌が、宿っているように思われます。生い立ちからくる深い孤独感と、それゆえに輝く生の肯定が、輝いています。詩・書・画の美も料理の世界も、彼の生命賛歌であるとも言えるでしょう。そうした檀の人柄に魅了された芸術家たちは、檀と石神井に同時代の芸術の磁場を形作りました。生誕100年記念のこの展覧会では、初公開の油絵なども展示し、檀一雄の生涯と文学の本質を探ります。
(練馬区文化振興協会学芸員 山城千惠子)※枠外・情報欄参照


  

■ぶんか村エッセイ(76)


啄木への想い
岡田喜秋(作家)

<プロフィール>
おかだ きしゅう 1926年東京生まれ。旧制松本高校を経て東北大学経済学部卒。1947年日本交通公社(JTB) に入り、1959年から12年間『旅』編集長を務める。1983年から18年間、横浜商科大学教授。紀行文作家兼エッセイスト。著書は『旅について』(講談社)、『思索の旅路』(大和書房)、『すべて・ふるさと』(中央公論社)、『秘話ある山河』(平凡社)『人生の旅人・啄木』(秀作社出版)など約50冊。紀行文学賞(1948年)、交通図書賞(1999年)受賞。西東京市在住

 今年は啄木の没後百年。不朽の歌集「一握の砂」は、今も読み継がれている。冒頭の名歌「東海の小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる」に詠われた「蟹」を見たのは、太平洋岸の陸前高田の浜辺である。中学三年生の夏休みに、盛岡から六人の学友と一緒に楽しんだ海水浴の日のことだ、と同行の友人が語っている。この陸前高田に建っていた歌碑は

  いのちなき砂のかなしさよ
  さらさらと
  握れば指のあひだより落つ

かつて私も見たこの碑が、津波で流されたと聞いて、現地へ行ってみた。東西二キロも続き、七万本もあった松原が、一本しか残っていなかった。
私は東京育ちだが、東北大学に学んだ青春時代から、啄木にひかれていたので、津波後の感想を軸に、「人生の旅人・啄木」という一冊を書いた。
松原も砂浜も水没して、一本残った松の印象は、死者の鎮魂を祈る啄木の姿のように思えた。この松を見て、思い出した歌は、

  頬につたふ
  なみだのごはず
  一握の砂を示しし人を忘れず
  
啄木は、十歳の時、三陸を襲った津波のことを聞いていたので、地元の人の気持ちを察して、作った歌だ、と思いたい。(※特集に関連記事あり)



 

■ぶんか情報

大泉学園ゆめりあホール・ギャラリー
〒178-0063 練馬区東大泉1-29-1(大泉学園駅北口)03-5947-2351 www.city.nerima.tokyo.jp/
●フルート・ガラ・コンサート〜F・クーラウ・秋の夕べ〜10/31(水) \1000 1900「グランド・ソロ,op-57」フルート/田中豊平 03-3929-5585

練馬文化センター
〒176-0001 練馬区練馬1-17-37(練馬駅北口) 03-3993-3311 www.city.nerima.tokyo.jp/
練馬交響楽団第56回定期演奏会〜練馬交響楽団創団30周年記念〜 11/18(日)\1000 1400 指揮/松尾葉子 フランス音楽の魅力
ショパン華麗なる協奏曲の調べ12/8(土)\4500 1400 ピアノ/小山実稚恵 ショパンの協奏曲を1日で全て聴ける贅沢なひととき

T・ジョイ大泉 シアター
〒178-0063 練馬区東大泉2-34-1(オズスタジオシティ4F) 03-5933-0141 www.t-joy.net  
ツナグ 10/6(土)〜 あなたがもう一度会いたい人は誰ですか? 死んだ人に会わせてくれる使者がツナグ 出演/松坂桃李 樹木希林

和光市民文化センター サンアゼリア
〒351-0192和光市広沢 1-5(和光市駅徒歩15分) 048-468-7771 www.sunazalea.or.jp
国立埼玉病院第10回市民公開講座「狭心症・心筋梗塞」 10/25(木) 入場無料 1330 要申込(ハガキ・FAX・インターネット・電話) 048-462-3062 
加登萌々子ヴァイオリンリサイタル10/27(土)\2000(当日2500) 1400 ドボルジャーク・ラヴェル・タイス・クライスラー 070-6449-2131※特集面参照
シネサロン・和光「わが母の記」11/4(日)\800(当日1000)1230・1630 原作/井上靖 出演/役所広司 樹木希林 048-465-0331チケットプレゼント有
山田佳代子ソプラノリサイタル〜心が紡ぐ夢のメロディー
〜12/2(日)\2000(当日2500)1400 石川啄木「初恋」 清水かつら「子守唄」ほか

その他のコンサート・展覧会・公開講座など
企画展「日本の70年代 1968-1982」〜11/11(日)\1000 1000〜1730埼玉県立近代美術館(JR北浦和3分)月休 048-824-0111
「道の会」病院展 10月「紅葉」・11月「道」 国立埼玉病院(和光市)2F 写真・絵画・押花 http://blog.goo.ne.jp/michinokai
高倉瑶子個展10/1(月)〜13(土)1100〜1900(日祝1130〜1800)最終日1700迄 野の花司2F(銀座3・7・21松屋裏)大泉在住作家 03-5250-9025
写団四季彩「四季の贈り物展」10/2(火)〜8(月祝) 入場無料 900〜1630(最終1600)板橋区立赤塚植物園(赤塚5・17・14 03・3975・9127) 048-461-7349
成増童謡まつり 10/6(土) 入場無料 1300 成増アクトホール 19団体680人が参加する「清水かつら」顕彰まつり 03-5998-6881
牧野富太郎植物画コレクション「海を渡って来た植物」10/6(土)〜12/2(日) 入場無料 牧野記念庭園記念館(大泉学園駅南口5分) 火休 03-6904-6403
水谷修講演会「夜回り先生いのちの授業 あした、笑顔になあれ!」
10/7(日)入場無料 1400(1300より整理券配布) 042-465-7200
志木フィルハーモニー管弦楽団第19回定期演奏会10/8(月祝)\500 1400志木市市民会館パルシティ(志木市本町) 090-1253-6451睡足軒の森日本の伝統文化体験講座-坐禅体験-10/11・18・28・11/2・8 1000〜1200
睡足軒の森「紅葉亭」各20名 048-477-1111生涯学習課
山野邊孝展10/12(金)〜19(金)1200〜1900(最終1700) ギャラリーFUURO(目白3・13・5イトーピア目白カレン1F目白駅3分) 03-3950-0775※特集面参照
前進座十月公演「おたふく物語」 10/13(土)〜21(日) \7000時間要問合 原作/山本周五郎 前進座劇場(吉祥寺駅10分) 0422-49-2811
秋の新作展「ハーブ草木染」10/13(土)〜16(火)900〜2000 呉服かたやま(学園町7・14・24) 草木染着物の展示 特典有 03-3925-7496
夫佐子はな10/24(水)〜29(月) 1130〜1830(最終1700) ギャラリーKOWA(表参道ヒルズ 副都心線明治神宮前5出口) 03-3925-6825※特集面参照
生島ヒロシ講演会「人生を楽しむ秘訣 心と体と財布の健康」11/3(土)入場無料1600ふるさと新座館(JR新座駅10分) 048-477-1111経済振興課
国立埼玉病院看護公開講座「冬に多い子どもの病気 〜家庭でできる子供のケア〜」11/8(木) 1400 ゆめあい和光 048-462-1101
ちひろスタイル―くらしのいろどり― 11/14(水)〜1/31(木)\800 1000〜1700ちひろ美術館(下石神井4・7・2) 月休 03-3995-0612
練馬手工芸作家連盟展11/17(土)〜24(土)1000〜1700石神井公園ふるさと文化館堤陽子(ステンドグラス)奥文子(押花)竹田恭子(粘土) 03-3996-4060
中国宋代絵画展-原寸大複製による- 11/24(火)〜12/22(火)入館無料930〜1630跡見学園女子大学花蹊記念資料館日祝休 048-478-0130
岩永善信ギター・リサイタル11/25(日)\4000(当日4500)1400 ハクジュホール(千代田線代々木公園駅5分) 090-2522-1539アトレ企画
第17回あさか寄席〜特選!豪華四人競演会〜11/25(日)\3000 1400朝霞ゆめぱれす 出演/小遊三・鶴光・三平・喬太郎 048-466-2525
生誕100年「檀一雄展」11/29(木)〜12/24(月祝)\300 900〜1800石神井公園ふるさと文化館 03-3993-3311チケットプレゼント有※特集面参照
「人間国宝 大坂弘道展」正倉院から甦った珠玉の木工芸11/29(木)〜2/11(月・祝) 入場無料練馬区立美術館月休練馬在住作家 03-3577-1821


編集メモ
 6月末に渋民・盛岡を訪れ、啄木ゆかりの地を巡ってきました。続いて文京シビックホールで開催された文の京講座「啄木学級」を聴講。ご協力いただいた関係者の皆様に心より御礼申し上げます。

プチぶんか村設置箇所
・大吾        ・堀田ピアノ教室    ・藍学舎
・梅の大谷      ・たまてばこ      ・ナカタヤ
・みゆずメソン    ・青樹舎硝子工房    ・夫佐子はな
・法台寺       ・満月         ・ひまわり美容室
・フエゴ       ・新座交響楽団     ・工房まどい
・オリエントハローズコーヒー   ・あわ家惣兵衛     ・国立埼玉病院
・青山フラワー    ・片山農産物直売所   ・ルジャンボン
・スペース陶     ・松崎医院       ・だいこんブラス
・切り絵&手打そば野田・田中屋酒店      ・石崎英数教室
・ニューアマンド   ・クロシェットドゥボワ ・近藤食品
・うさぎの輪     ・きもの処つるや    ・酒のおぎはら
・だちょう牧場並木屋 ・ポラン書房      ・りゅうの会
・イズミアート    ・ギャラリー北鎌倉物語 ・クリアライフ
・うどん亭      ・ギャラリーFUURO      ・抹茶そば陣屋
・フェルナンブーコ  ・田倉商店       ・写団四季彩
・花と美登利     ・こぐれ村       ・目白大学
・跡見学園女子大学  ・花蹊記念資料館    ・紫織屋
・シネサロン和光   ・和光文化をはぐくむ会 ・武蔵野楽器
・こみゅにてぃかふぇ和・スペースM      ・紗耶加人形
・石神井ファーマーズセンター  ・新倉ふるさと民家園  ・シオン
・石神井ふるさと文化館・呉服かたやま     ・ゆきこ結気膳の会
・桃美会       ・ギャラリーoh     ・むらさきの会 
☆練馬区&朝霞・志木・新座・和光の各市図書館・公民館・文化施設など

制作協力スタッフ
  北口雄輝 丸木ますみ 岩下曜子 土井久代 杉山英明 早川緋紗 宇杉


 
■Big Supporters