秋の一日は文化的な過ごし方を…そんな方には目白文化村散策がおすすめ。当地からも程よい距離に位置し、気軽に何度でも通えます。かつては文学、芸術、政財界ほか多くの著名人が住んでいたところで、いまもその風情があります。思い立ったら吉日、行くなら今秋！

「目白文化村」とは
　町おこしのために近年つけられた愛称ではなく、大正から昭和にかけて実存した郊外住宅地の名称。かつては「下落合」、現在の新宿区中落合、中井、西落合あたりを含みます。
　わが大泉学園と共通しているのは、箱根土地株式会社の堤康次郎が開発した文化構想エリアであるという点。大泉学園の開発は、堤が学園通りを開設し、碁盤目のような区画整理をし、一橋大学の誘致を図ったことなどが挙げられますが、ほぼ同時期に目白文化村も築かれていたことになります。堤は大正３年に下落合の大地主から２６６７坪という広大な土地を購入し、早稲田大学や近衛家、相馬家の所有地など周辺一帯を次々と買収。大正11年の｢第一目白文化村」に始まり、第二、第三…第五文化村に至るまで約７年の歳月をかけて開発分譲し、自らも下落合に住んで事業の拠点としました。西武新宿線が開通したのは昭和２年、次第に交通至便の地となります。山手通りと新目白通りの開通により、やがて文化村は縦横に分断されることに。東京大空襲では大半の住宅が焼失し、戦前の面影はかなり薄れました。

当地との縁
　目白文化村とぶんか村エリアのつながりは堤康次郎だけにとどまりません。新座市の平林寺に墓があり、茶室「睡足軒」、別邸「柳瀬山荘」、慶応志木高、サンケン電気…などがゆかりの茶人松永耳庵こと「電力の鬼」松永安左エ門の本邸は、あまり知られていませんが目白文化村にありました。大正11年東邦電力の設立とともに東京に本社が置かれると、安左エ門は下落合に社宅用地６５００坪を得、下落合の「林泉園」と称する地に屋敷を構えたのです。翌12年に起きた関東大震災の翌日、９月２日には、自邸内に応急事務所を設置し、罹災職員の救護や通信連絡に当たりました。落合崖線に残された斜面緑地は今も環境がよく、閑静な住宅街となっています。JR目白駅から歩いて10分。

おとめ山公園
　松永邸付近一帯は、昔将軍家の鷹狩り場として立入禁止区域だったことから御留山(おとめやま)と呼ばれました。明治になると近衛家と相馬家（福島県相馬地方のお殿様筋)が所有し、西側所有の相馬家が大正３年に林泉園を築きました。のちに松永安左エ門の自宅兼茶室となる場所です。
　現在のおとめ山公園は、新宿区立公園として緑豊かな憩いの場。園内の湧水は東京湧水57選の一つで、蛍の飼育も行われています。　只今拡張工事中で、26年秋には区内２番目の規模となって一般開放される予定。入園無料　７〜17時(10〜３月)

動物を愛する街
　おとめ山公園近くで見かけた「カルガモ横断注意」、新座平林寺や大泉中央公園にある｢たぬきに注意｣の標識。まだまだ自然が残っているということですね。

中村彝アトリエ記念館
重要文化財「エロシェンコ氏の像」をはじめ数多くの名画を残し、37歳で夭折した中村彝（つね）。
大正５年から新宿区下落合のアトリエで創作を開始。そのアトリエが整備、復元されて今春一般公開したばかり。映像やパネルで彼の生涯や画業を紹介し、家具やイーゼルなどの調度品がみごとに再現されています。本物を所蔵展示するのは生誕地である水戸の茨城県立美術館ですが、アトリエ建築自体はこちらが原形をとどめています。
入館無料　10〜16時30分　　月曜休館　　
０３-５９０６-５６７１
下落合３-５-７


佐伯祐三アトリエ記念館
練馬区立美術館が２００５年に開催した「佐伯祐三-芸術家への道-展」は、空前の動員数を記録したと聞きました。それほどファンの多い画家です。作品はパリの風景を中心に、個性あふれています。そんな彼が日本で唯一の拠点としたのが｢下落合」。「下落合風景」の連作には地元を愛する気持ちが表れているようです。近年アトリエ内部も公開され、この連作がパネルで鑑賞できるようになりました。ライフマスクの複製なども。
入館無料　10〜16時(10〜４月)　月曜休館　　
０３-５９８８-００９１
中落合２-４-21

會津八一の落合秋艸堂(しゅうそうどう)
　佐伯祐三のアトリエからほど近い落合第一小学校の東隣は、10年ほど前までは塀に囲まれた空地でしたが(現在は住宅が建ち並ぶ)、ここに會津八一の秋艸堂がありました。歌集『南京新唱』を出版したのもここ。同書中、落合秋艸堂での暮らしを17首に詠んだ「村荘雑事」が特に気に入っている…と晩年の中村彝が八一宛に手紙を書いています。

武蔵野の 草にとばしる
村雨の いやしくしくに
　　暮るる秋かな

目白文化村の歩き方
　ＪＲ目白駅、高田馬場駅、西武新宿線下落合駅、中井駅が起点。今回は西武池袋線椎名町駅から。改札を右に出て山手通り一つ目の歩道橋「富士見台歩道橋」を渡り天祖神社の角を左折。目白通りの信号(下落合４)に出たらさらに直進。「佐伯公園」の大きな表示が見えるので角を曲がると佐伯祐三アトリエ記念館。椎名町駅から約10分。アトリエで地図や資料をもらい聖母病院の向かい側方向へ。大六天→下落合公園→アダチ伝統木版画を経て中村彝アトリエ記念館に至る。林泉園跡を右に見て、おとめ山公園へ。鬱蒼とした園内を横切り、相馬坂を下れば新目白通り。氷川神社前を過ぎて下落合駅前信号から西坂を登り、秋艸堂跡地へ。小学校前の道を西へ向かえば山手通り。椎名町へと戻る。以上取材で回ったルートです。目白周辺、中井周辺も大変魅力ある散歩道です。ぜひお出かけください。


<オリジナル>
お守り･ストラップ･カンバッジ…ヌマ商会
新座のゆるキャラ｢ゾウキリン｣にちなんだストラップやカンバッジ、ポロシャツ…これらが市内で製造されていると聞いて訪ねてみました。その(有)ヌマ商会、本業は全国の社寺仏閣のお守りを生産する会社。全国シェアなので、あなたの手元にあるお守りもここの製品かも。ストラップやカンバッジはヌマ商会の専務三田成克さんが観光振興のために開発したもので、特にカンバッジは子どものお小遣い程度でオリジナルを1個から受注。30個以上ならさらにコスト安 !! 本紙を見た…とご注文ください。
新座市畑中1-5-37　048-480-3223

<JAZZ&ﾎﾞｻﾉﾊﾞﾗｲﾌﾞ>
ヨーロッパデビューした 諸星裕美さん　10/19
今年5月､フィンランドのさくら展で、ウクレレの弾き語りをさせていただきました。そして10月、ヤオコー川越美術館ラウンジの素晴らしい桜の絵(三栖右嗣作)の前でジャズ＆ボサノバを歌います。今年は桜にご縁があるようです。子育てや義母の介護をしながらコツコツやってきた音楽活動も、少しずつ花開いて来ました。芸術の秋、素敵な美術館での心地よい歌声、お楽しみください。予定曲目は､♪星に願いを､フライ･ミー･トゥー･ザ・ムーン､スマイル､ダニー･ボーイ､枯葉､イパネマの娘…ほか。お申し込みは直接同館へ。
川越市氷川町109-1　049-223-9511　先着70名
↓諸星裕美ブロクﾞ
http://manystars.exblog.jp/

<クッキング>
「いも羊羹」を手作りで
おいものおいしい季節。熱い日本茶を入れて召し上がれ！
【作り方】

�@ 300ｇのさつまいも1本。3分の一を皮付きのままいちょう切りにし、砂糖120ｇ、水100�tで甘く煮ておく �A 残りは皮をむいて１〜２cmの輪切り、流水に約1時間さらす �B さらしたさつまいもを耐熱皿にのせ電子レンジ500Ｗで７分、裏ごしするかフードプロセッサーにかける �C 水100cc､粉寒天2ｇを鍋で温め､寒天が溶けたら砂糖80ｇと�Bを加え、焦がさないよう中火で3〜4分練る �D �Cに甘煮を加え混ぜ合わせ、型に入れて冷やす

<展覧会>
青樹舎硝子工房展　　　10/4〜7
　今年夏は暑く長かったです。ガラス工房の暑さはその一段上をいきます。ガラスという素材が水や氷を連想させるので、夏が作品のシーズンというのも皮肉なものです。そんな夏のあいだでも、工房に通うアマチュア作家さんたちは毎週末がんばって火の前に立ち、制作を続けました。真剣勝負の制作なのですが、出来上がる作品はなぜかほっこり、笑みを誘うような一品ができあがります。そんな作品を一堂に集めての展示をさせていただくことになりました。おし
ゃれな西麻布のなかで、オールウエイズの時代を彷彿とさせる一角にひっそりと佇むギャラリーです。新国立美術館にも近く、おしゃれなお散歩にいかがでしょうか？
http://seijusya.com