■特集 草野心平


 詩人草野心平は、昭和24年から27年にかけて下石神井に住んでいました。
 緑豊かな石神井公園に隣接する「練馬区立石神井公園ふるさと文化館分室」。その展示室には作家檀一雄の書斎「奇放亭」が再現され、練馬に因む多くの文化人の紹介がなされています。草野心平もその一人。常設の電報に注目しました。






檀一雄への電報
 展示されている電報は、1975年11月11日、草野心平が九州大学付属病院に入院中の檀一雄に宛てたもの。
クワタクノヒトノサイシュウカイヲヨミ」コウジュツノブンヲヨミ」カンドウス」ツラカロウガシンボウサレタシ」ソシテトウキョウニアラワレヨ」クサノシンペイ
詩人ならではの表現とやさしさに満ちています。檀はこの約2カ月後この世を去ることに。九州柳川にある墓碑は、草野心平の揮毫によるものだそうです。

草野心平について
 なんといっても一般には「蛙の詩人」として有名。1903(明治36)年福島県石城郡上小川村(現 いわき市小川町)に生まれ、磐城中学(現県立磐城高校)から慶応義塾普通部を経て中国広東省の嶺南(現中山)大学に留学。約1400編の詩作、書画もよくし、詩誌の発行なども手掛けました。宮澤賢治を世に紹介したことでも知られています。1987年文化勲章受章。1988年11月12日没。享年85。

心平さんとカエル
 全体から見れば一部であってもカエルにまつわる詩は表現のバリエーションが豊富で、やはり心平さんとカエルは切り離せません。生まれ育った故郷のカエル、東京に住んだ石神井あたりの田んぼや池のカエル、名誉村民である福島県川内村の天山文庫付近の天然記念物モリアオガエル生息地など生涯を通してカエルには縁があったようです。カエルの詩は小中の教科書でも取り上げられています。

石神井公園のカエル
 そこでカエルの話題を拾ってみることに。夏になると分室付近でもカエルの合唱がにぎやかだそうで、公園ではなじみの生き物。三宝寺池寄り石神井池の旧ボート乗り場付近にある大きなカエルの像。これは47年前に設置された、湧水を汲み上げ口から吐き出させる噴水のようなもので、今はアオコの調査のため水はストップ。像はフェンス越しに眺められます。現在、石神井公園に生息するカエルは、ニホンアマガエル、アズマヒキガエル、ヤマアカガエル、トウキョウダルマガエル、ウシガエルの5種。

社務所暮らし
 心平さんが住んだのは、都立井草高校向いの御嶽神社社務所(下石神井一の四〇三)。先々代の宮司石塚忠顕氏と心平さんの二男が交友関係にあったことから。『歴程』の編集をしたのも、詩集『天』、評論『宮澤賢治覚書』などを書いたのも、小石川で「火の車」という居酒屋を開業したのもこの時代。神社の話では「1950年に『蛙の詩』により読売文学賞を受賞した際には忠顕氏の紺のスーツを借りて授賞式に臨Iんだ」とか。心平さんが宮司に間違えられたという逸話も残っています。

石神井小学校校歌
♪朝は浅葱の靄に明け
夕べは金の陽が沈む…
御嶽神社に滞在していた1951年、創立七十七年記念として校歌作詞の依頼が舞い込みました。昔は運動会の時などそのメロディーが御嶽神社まで届いたそうです。100以上の校歌・社歌を作り「小学校の校歌がいちばん難しい」と語った心平さん。練馬区内では石神井中、石神井東中、練馬東中の校歌も作詞しています。

いわき市立草野心平記念文学館
 生まれ故郷にある記念文学館へ行ってみました。阿武隈山系を見はるかす絶好のロケーション。展示も心平さんの魅力が余すところなく引き出され、さまざまな趣向が凝らされています。彼の業績を伝えると同時に、詩などの文学研究発表や情報交換の場。決してアクセスがよいとはいえないものの、苦労してたどり着けば数倍の楽しみが得られそう。同館長は練馬在住の文芸評論家粟津則雄氏というのも何かの縁。ゆっくり時間をとって訪れたい施設です。
いわき市小川町高萩字下夕道1-39
0246-83-0005入館430円 9〜17時 月休
アクセスはホームページで確認を http://www.k-shimpei.jp/

生家とお墓
 文学館から4q離れた場所に16歳まで過ごした生家と草野家の菩提寺常慶寺があり、生家では少年時代を偲ぶことができます。

天山祭り
 川内村の天山文庫で心平さんの生前から続いている行事。酒肴を持ち寄り時を忘れて楽しむ…。今も遺徳を偲びながら詩の朗読や伝統芸能を鑑賞します。
毎年7月第2土曜日
0246-38-3807

「学校」の思い出東大泉のMさん
 分室の展示を見てこの人が練馬に関係あるの?とビックリ。心平さんは昔彼が新宿で「学校」という名のバーをやっているころ、何度か行ってお会いしました。小さな店で、彼にイカの塩辛の作り方を教わりました。

草野心平の代表作
秋の夜の会話
さむいね
ああさむいね
虫がないてるね
もうすぐ土の中だね
土の中はいやだね
痩せたね
君もずゐぶん痩せたね
どこがこんなに切ないんだらうね
腹だらうかね… (「第百階級」)
※心平作品を知るには岩波文庫の草野心平詩集を。

<レポート>
4月4日、大泉学園駅アニメゲートの除幕式


<すぐれもの>
この味です!『この味』

 大泉学園駅北口グラン・エミオ地階「三浦屋」調味料コーナーに置かれた「この味」。その社長さんからメッセージが寄せられました。「大泉学園とその周辺のみなさん、こんにちは!三重県四日市〈この味本舗〉秋田と申します。チョット珍しい"この味"は、カツオ・昆布・椎茸のうまみ成分に塩が入った無色透明の不思議な万能うま味液体調味料です。和・洋・中といろいろな料理に使え、〈たまごかけごはん〉ならこの味と醤油を半々に混ぜご飯にかけるだけ〜〈うま塩キャベツ〉はこの味とごま油を半々に混ぜてざく切りキャベツにからめるだけ〜どちらもやみつきになります。トンテキはじめほかのレシピはホームページ http://www.konoaji.com/ に満載。大泉進出を記念して試供品を10名様にプレゼント。ぜひお試しくださいね〜」。お申し込みはFAXかハガキで編集部まで。 

<ふるさと>
新座館 神楽ルネッサンスがおもしろい 7/11

日本人に最も深く長く寄り添い続けてきた芸能「神楽」。里神楽が新座野火止に息づいて4世紀。この夏多くの支援の下、落語家の桂文ぶん、ピアニスト石井りえ、サプライズゲストらを迎え、地元新座にて初の主催公演が行われます。伝統芸能の妙を。
チケット取扱店:酒のおぎはら・青山フラワー・きもの処つるや  情報欄参照

<ギャラリー情報>
ねこの木彫展

猫を題材に制作している下石神井の彫刻家、島田紘一呂さん(練馬区美術家協会会長)による魅力あふれる「猫たち」に会いに来ません
か? 約20点展示。 6/12〜24
オリエンタルハート(石神井公園駅3分)03-3996-7419 情報欄参照



<タウン>
隠れ家的な名物喫茶店『華樓(ガロ)』
 
「大泉にホットケーキのうまい店がある」と読者からの投稿。たたずまいが和風なので甘味処かと思えばランチもやっているしケーキもある!しかも店名はなぜか懐かしい"ガロ" (ただし♪君とよくこの店に来たものさ〜とは無関係) 。ご主人は和菓子屋に弟子入りしたあと洋菓子へ。高名なパティシェに出会いその下で修業した人。和洋両党ってわけです。注文を受けてから手作りするためいつも出来立てが味わえます。12年間据え置かれた値段、みやげ用の幸せを呼ぶ自家製スペイン菓子「ポルボローネ」、はたまた一角の茶室、趣味のミニ盆栽、冬も食べられるかき氷…と話題の尽きないお店でした。
03-3924-5724 11:00〜20:00水休
大泉学園駅南口 勤労福祉会館そば


  

■ぶんか村エッセイ(92)


大泉今昔
牧 美也子(漫画家 大泉町在住)

◆プロフィール

まき みやこ 兵庫県神戸市出身。1957年『母恋いワルツ』でデビュー。『少女三人』『マキの口笛』をはじめとする少女マンガは団塊世代の少女たちに夢と希望を与えた。『少女』(光文社)『少女フレンド』(講談社)等で活躍後、『悪女聖書』『源氏物語』等のレディースコミックに転向。「リカちゃん人形」は氏の作品から生まれた。


大泉に住み始めて五十五年余りになります。
初めて来た時、小高い丘から西の彼方に夕焼け富士の美しいシルエットが望めました。なんて素敵!ここに住もう!と。
その頃の大泉は未だ広々と田畑や芝畑が拡がり、わら葺きの農家や林がありました。
夜には天の川が悠々と夜空を横切っていました。
西武池袋線大泉学園駅は、まるで遊園地の電車のようなかわいい駅舎でした。
駅舎改装の時、工事が始まると駅前に自然に人が集まり、正面駅名プレートが外された時は全員から溜息が漏れました。愛されていた駅舎でした。
住宅やビルが急速に増え、街の夜は明るくなってゆき、天の川も薄らぎました。
東京オリンピック開会式には、氷川神社の向こうの空に大きな五色の五輪が浮かびました。自衛隊のブルーインパルス五機、素晴らしい飛行技術でした。
名産練馬大根の巨大なたくわん樽が幾つも並んでいた原っぱは、関越と外環のインターチェンジになりました。
見上げれば、大泉の空はあの頃と変わらず高く広々としています。

私はこの町、
大泉が大好きです。



 

■ぶんか情報

大泉学園ゆめりあホール・ギャラリー
〒178-0063 練馬区東大泉1-29-1(大泉学園駅北口)03-5947-2351 www.city.nerima.tokyo.jp/ 
●歌声喫茶ともしびin大泉学園 6/17(水)・7/23(木) \2000(歌集貸出\100)950 懐かしい青春歌謡をみんなで歌いましょう 03-6907-3801
●リラアンサンブル「室内楽の彩り オリエンタルへの憧れ」 7/7(火)\2000(当日2500) 1900 チェロ・ヴァイオリン・ピアノensemble_lyra@yahoo.co.jp

練馬文化センター(ホール・ギャラリー)
〒176-0001 練馬区練馬1-17-37(練馬駅北口)03-3993-3311  http://www.city.nerima.tokyo.jp
●石神井Int'lオーケストラ第2回定期演奏会 6/21(日) 入場無料1430(ユース)1700(大人) ドヴォルジャーク弦楽四重奏曲より「アメリカ」 080-4116-9215
●練馬交響楽団第61回定期演奏会 7/12(日)\1000 1400「ルスランとリュドミラ」より序曲 チャイコフスキーヴァイオリン協奏曲 ラフマニノフ交響曲第2番

T・ジョイ大泉 シアター
〒178-0063 練馬区東大泉2-34-1(オズスタジオシティ4F) 03-5933-0141 www.t-joy.net
●おかあさんの木6/6(土)〜 児童文学者大川悦生(98年没)による同名著作の映画化 号泣必至!出演/鈴木京香 志田味来 三浦貴大
●海街diary  6/13(土)〜 家族を捨てた父が、のこしてくれた家族。監督/是枝裕和 出演/綾瀬はるか 長澤まさみ 夏帆 広瀬すず
●愛を積むひと 6/20(土)〜 夫婦間、世代間における生き方愛し方を改めて考えさせられる 出演/佐藤浩市 樋口可南子 北川景子

和光市民文化センター サンアゼリア
〒351-0192和光市広沢 1-5(和光市駅徒歩15分) 048-468-7771 http://www.sunasalea.or.jp
●和光市民オーケストラファミリーコンサート2015 6/7(日) \500 1400 モーツァルト交響曲「ジュピター」 ビゼー「アルルの女」より 048-465-1981
●国立埼玉病院市民公開講座「最新の脳卒中治療について」 6/18(木)入場無料(要申込)1330〜1555 048-462-3062(平日900〜1700)
●Earth Beats' Emotion 8/9(日)\2500 1800 タップ×音楽×ダンスの本質的コラボレート(7/11・26 8/1ワークショッフ\1000有) タップ/清水夏生

その他のコンサート・展覧会・公開講座など
●高倉瑤子展〜
6/3(水)入場無料1100〜1800オリエンタルハート(石神井公園駅3分)東大泉在住 切り抜き紙版画作家 03-3996-7419
●「ねりまと鉄道―武蔵野鉄道開通100年―」 〜6/7(日) 観覧無料 900〜1800  石神井公園ふるさと文化館 月休 03-3996-4060
●草野心平の詩 視覚詩編 〜6/14(日) \430 900〜1700 草野心平記念文学館 絵画的手法を用いた独特な自筆原稿等 0246-83-0005
●新収蔵品展 ―檀さんとコミさん― 〜6/28(日) 観覧無料 900〜1800 石神井公園ふるさと文化館分室 月休 03-5372-2572
●ちひろの本棚・没後10年「長新太の脳内地図」展 〜8/2(日) \800 1000〜1700ちひろ美術館(下石神井4・7・2)月休 03-3995-0612
●三栖右嗣━めぐりあう人めぐりくる季節 〜9/13(日)\300(入館料+飲物セット\500)1000〜1700ヤオコー川越美術館 月休 049-223-9511
●「道の会」国立埼玉病院展示 6月「ガーデニング」 7月「自然」 国立埼玉病院(和光市諏訪2-12) 写真・絵画・南画・書など 090-6034-3845
●「蜜柑とユウウツ〜茨木のり子異聞〜」公開ゲネプロ 6/3(水)\500 1630志木市民会館パルシティ グループる・ばるvol22 048-474-3030
●島田紘一呂「ねこの木彫展」 6/12(金)〜24(水)1100〜1800(最終日1600)オリエンタルハート(石神井町3・16・17)木休 03-3996-7419
●資料展「関根雲停〜牧野富太郎の植物画コレクションより」6/13(土)〜7/5(日) 入館無料 900〜1700 牧野記念庭園記念館火休 03-6904-6403
●大学開学50周年特別展示U「跡見花蹊の教育-画-」(画手本の世界)」6/16(火)〜8/3(月)入館無料930〜1630花蹊記念資料館 048-478-0130
●東久留米ドキュメンタリー映画祭4 6/20(土)・21(日) \1000(1作品) 「世界の果ての通学路」「日本と原発」「よみがえりのレシピ」ほか 042-470-7813
●野火止用水灯明まつり 6/28(日) 1700〜2100 願い事や子どもの絵の灯明が並ぶ 西分橋付近 荒天中止 090-3178-5581チーム・キャロット
●第56回日本書鏡院展6/29(月)〜7/5(日) 930〜1730(最終1500) 入場無料東京都美術館(上野公園)鶴岡桃華氏南画出展 03-3471-8032
●十文字女子大学公開講座「美術館は魔法のランプ?〜学芸員と地域でつくる文化の場〜 7/4(土)無料(要申込)1330 048-477-0958
●志と仲間たちと-文士たちの石神井、美術家たちの練馬7/4(土)〜9/27入場無料900〜1800石神井公園ふるさと文化館分室月休 03-5372-2572
●第一回「里神楽を楽しむ会+α in新座」 7/11(土) \2500(当日3000) 1430・1830 ふるさと新座館 048-477-2298オフィス「KAGURA座」
●開館30周年記念「舟越保武彫刻展 まなざしの向こうに」7/12(日)〜9/6(日) \800 1000〜1800練馬区立美術館月休 03-3577-1821
●ムズィークヴァルトコンサート 7/26(日) \2500 1430 新座市民会館 ピアノトリオ(ハイドン・ブラームス・メンデルスゾーン) 070-5550-3773
●アクロバットダンスサーカス8/8(土)\2000 1330 朝霞市民会館ゆめぱれす(朝霞駅12分)ダイナミックな組技とパフォーマンス 048-466-2525
●被爆ピアノコンサート「未来への伝言」8/8(土)\2500 1400 船橋市民文化ホール 出演/杵屋淨貢 谷川賢作 おおたか静流 飯島晶子 03-3998-8254

編集メモ
 取材中、20年間たゆまず月刊情報紙を発行しつづけているという女性に会いました。60から始めて今80歳。病気を克服できたのもこの仕事があったから、との話にすっかり目が覚めました。

プチぶんか村設置箇所
・大吾        ・堀田ピアノ教室    ・藍学舎
・梅の大谷      ・たまてばこ      ・ナカタヤ
・みゆずメソン    ・青樹舎硝子工房    ・法台寺
・満月        ・ひまわり美容室    ・フエゴ
・新座交響楽団    ・工房まどい      ・オリエントハローズコーヒー
・国立埼玉病院    ・青山フラワー       ・片山農産物直売所
・呉服かたやま    ・ルジャンボン     ・スペース陶
・松崎医院      ・だいこんブラス    ・切り絵&そば野田
・田中屋酒店     ・石崎英数教室     ・ニューアマンド
・クロシェットドゥボワ・うさぎの輪      ・きもの処つるや
・だちょう牧場並木屋 ・酒のおぎはら     ・ポラン書房
・JAZZ山田英二    ・ギャラリー北鎌倉物語   ・ピアノクリエ
・うどん亭      ・ギャラリーFUURO      ・抹茶そば陣屋
・フェルナンブーコ  ・田倉商店       ・写団四季彩
・花と美登利     ・こぐれ村       ・目白大学
・跡見学園女子大学  ・花蹊記念資料館    ・シネサロン和光
・和光文化を育む会  ・武蔵野楽器      ・スペースM
・シオン       ・桃美会        ・ギャラリーoh
・むらさきの会    ・ふたば植物画切り抜き紙版画教室
・ボサノバ諸星裕美  ・埼玉フィルハーモニー合唱団  ・オリエンタルハート
・スペースKIRAKU     ・社会保険労務士伊藤事務所
・とれたて村石神井  ・歌声喫茶ともしび   ・後藤友禅染色工房
・武州里神楽「石山社中」           ・ふるさと新座館
・石神井公園ふるさと文化館(本館・分室)    ・新座観光プラザ
・新倉ふるさと民家園☆練馬区&朝霞・志木・新座・和光各公共施設等


制作協力スタッフ
  北口雄輝 丸木ますみ 岩下曜子 土井久代 杉山英明 早川緋紗 宇杉


 
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