今回は江戸時代の酒井忠勝を取り上げました。なぜ唐突に？と思われるかもしれませんが、ドラマや小説に主役ではないにしろよく登場する忠勝が当地と多少なりとも縁があることに気づきましたので、そんなことを紡いでいきたいと思います。

二人いた！
同姓同名の酒井忠勝。一人は川越藩主でのちに若狭小浜藩主となる酒井忠勝(１５８７〜１６６２)。もう一人は徳川家康四天王の一人酒井忠次の孫で庄内藩初代藩主の酒井忠勝(１５９４〜１６４７）。さらに同姓同名者が一人いますが、ここでは前述の二人に絞ります。

川越藩主・酒井忠勝

　忠勝は徳川家譜代の名門雅楽頭家酒井忠利の長男。三河国西尾に生まれ、14歳で父とともに川越へ。川越藩二代藩主。秀忠、家光、家綱と徳川三代に仕え、竹千代(家光の幼名)に仕えたのち老中、大老となります。

イラスト/柴崎真由子

松平信綱との接点
　松平信綱といえば川越藩主、老中を務めた江戸時代の有名人。知恵伊豆ともいわれ、幼少のころから頭がよく、ＮＨＫの人気番組「知恵泉」は信綱にちなんでつけられた名称。新座平林寺に墓所があることから、現在も平林寺の「半僧坊大祭」では伊豆殿行列が通りを練り歩きます。地元新座では松平信綱といえば「野火止用水」です。
　「我が右手は讃岐(忠勝)、左手は伊豆(信綱)」と家光から絶大な信頼を寄せられた二人は、江戸城内においては保科正之の命を受け蓄財を背景にした福祉政策・災害救済対策・都市整備等に力を注ぎます。幕藩体制の確立に尽力した功績は大。初めての大老となって大老職の骨格を作り上げたのは忠勝です。

時の鐘
蔵の街にそびえる川越のシンボル「時の鐘」を建設したのも忠勝で、大火による焼失を再建に導いたのが信綱だといわれます。ちなみに現在の鐘楼は明治時代に再建された４代目。

茶人
　小堀遠州が江戸づめだった４年間、茶の湯を通して遠州と親交を深めた忠勝は「数寄大名」ともいわれました。茶の湯にとどまらない深い交流を続け、孫娘は遠州の嫡男に嫁いでいます。

和光に弟の墓がある　
　忠勝の弟忠重は新倉村(和光市)の領主で旗本。その忠重が開いた曹洞宗壹鑑寺(いっかんじ）の境内には大きな五輪塔が三基並んでいます。中央が忠重、右は忠重夫人、左は二代忠興夫人。高さ約４ｍの忠重の塔には「松厳院殿薹月壹鑑大居士」「慶安元子年六月念日」と刻まれ、スケールの大きさからも偉い人のお墓であることが一目瞭然です。
和光市有形文化財

牛込矢来町
　家光にことのほか信頼された忠勝ということで牛込の酒井家下屋敷への御成りは異例の回数でした。江戸城本丸が火災のときも家光は酒井方に身を寄せたほど。忠勝は御成りの際の防衛策として塀ではなく竹矢来を設け、それが「矢来町」の由来となっています。
そのほか
　容貌は武田信玄によく似ていたそうです。寛永11年に若狭に転封され小浜藩主となり、７６歳で没。

庄内藩主・酒井忠勝

　一方庄内藩主の忠勝は、徳川四天王の最古参譜代筆頭で最年長者の酒井忠次の孫。祖父とは異なり短慮でわがままな性格。過酷な徴税で農民が逃げ出す藩政を行いました。忠勝の長男忠当(ただまさ)の正室は松平信綱の長女で、忠当が絡むお家騒動「長門守事件」では信綱が穏便に事を収めます。忠勝が54歳で死去した際に信綱は「もし忠勝があと半年存命したなら酒井家は破滅していた」と語ったそうです。

イラスト/柴崎真由子

『長門守の陰謀』
　「長門守事件」を題材にした小説が藤沢周平の『長門守の陰謀』(文春文庫)。小説には忠勝とその弟長門守忠重が登場します。35頁ほどの短編。あとがきには周平さんの描く大泉学園町界隈が出てくるのでぜひ一読を！

大河ドラマ『おんな城主直虎』
５月21日に酒井忠次が初登場。配役はみのすけさん。徳川家康役の阿部サダヲさんと共に出演すると思われます。忠勝のおじいさんがどんな人だったかにご注目ください。

<演劇>
千夜一夜座第7回本公演「まゆみのマーチ」
　まゆみは歌が大好きな女の子。小学校でも授業中に歌ってしまう娘を、母は決して叱らなかった。ところが、担任教師のある指導がきっかけで、まゆみは小学校に通えなくなってしまう。その時、母が伝えたことは･･･。
石神井公園に本拠を置く千夜一夜座。昨年の６･７月号エッセイは代表の黒柳千寿江さんに書いていただきました。演出･脚本の渡辺氏はいわき出身、人形劇団プーク出身。
原作:重松清　脚本:黒柳千寿江･渡辺啓明　演出:渡辺啓明
6/16(金) 14:30 19:00　　読者プレゼント
６/17(土)13:30 18:30　17日13:30のチケ
６/18(日)13:30 17:30 　ットを２名様に！
※応募はハガキで編集部まで
シアターグリーン(豊島区南池袋2-20-4)
\3500(当日3800)(65歳以上/身障者手帳
\3000　中･高生\1500 　小学生\1000）

<本>
『戦中戦後の日々』〜わたしが子どもだったころ〜
　大泉学園のうなぎ店「ふな与」の店主で奥会津の風景や人々の暮らしを撮り続けてきた写真家でもある竹島善一さんの著作。縁の深い奥会津書房から出版されました。東京育ちの竹島さんの終戦前後10年間にわたる少年期の暮らしぶりや思いが軽快な筆致で綴られています。氏の素晴らしい記憶力により同時代を生きてきた人にも、戦争を知らない世代にも共感されることでしょう。
夏休みの読書にも適。奥会津書房刊
800円(本体741円＋税)　03-3260-0351
※竹島さんについては本紙エッセイ＃83

<サンアゼリア>
舞台上で歌曲を楽しもう！　6/23　
出遅れながらも自分の意志で音楽の道に進んだ布施雅也さんは努力と信念のテノール歌手。音楽評論家の畑中良輔さんに絶賛された声で『初恋』(石川啄木)『九十九里浜』など日本の名曲を聴かせてくれます。しかも今回は演奏家も観客もともに舞台に上がりバリアフリーで身近に音楽を楽しむという趣向。父親が和光郵便局前のレストラン「クロシェット･ドゥ･ボワ」の専務であることから、会場で味わえるとびきりおいしいコーヒーにも期待できそうです。｢新倉うどん｣の販売もあり。情報欄参照

<サンアゼリア>
ごとうけい紙工作展2017 7/26〜30
昨年海の日の『睡足軒の森が海なる』展に続いて、今夏はサンアゼリアで『ごとうけい紙工作展2017 空飛ぶペンギンがやってくる!?』が開催されることになりました。紙の動物たちの展示はもとより作家本人の指導によるワークショップは魅力。一枚の型紙から立体の動物ができ上がる感動。子どもたちが喜々として取り組む様子は忘れ難い夏の思い出になることでしょう。子どもばかりか大人も夢中にさせられそう。エッセイ・情報欄参照

<NEW>
のびのび勉強！ニューアマンド2階で　 　
新座市立野火止小学校の生徒は「のびっ子」と呼ばれています。野火小向かいにあるケーキ屋さんの一人息子松浦仁志さんも野火小OB。この春ケーキ工場２階に完全個別指導の塾を開設しました。系列塾ですが、ここ野火止校の特色は､生徒さんの誕生日に学力向上を願って銘菓「のびのびロール」がプレゼントされること。のびのびロールを食べて成績ものびのび〜!!
Dr.関塾 新座野火止校　
新座市野火止4-5-25　048-482-4119





<師弟絵画展>
近藤征治氏(新座)と故･詩人松永伍一
　上石神井に住んだ詩人･松永伍一の遺作「詩集生原稿及び絵画小品」企画展が青木繁ゆかりの福岡県大川市立清力美術館で開催されます。「近藤征治の夢世界展」も同館で同時開催。本展では松永先生に
教わった故郷の同窓生が支援。また近藤さんの出展作品会津の木こりの鋸を描いた大作(100号)を家具の街大川市にふさわしいとの理由で会期終了後寄贈予定。開会初日の作品寄贈式で大川市長に｢黄昏の妙義｣30号の作品寄贈目録を手渡します。6/4(日)〜25(日) 月休 情報欄参照