■特集 ブレヒトの芝居小屋


 エッセイにもあるように「ブレヒトの芝居小屋」は東京演劇アンサンブルの拠点である。40年の歴史をもつこの劇場が2019年3月をもって閉館する。この地に根差した文化が消えそうないま、劇団の歩みを紹介する。

東京演劇アンサンブル
 1954年劇団三期会が創立、68年に東京演劇アンサンブルと改称。80年練馬区武蔵関にブレヒトの芝居小屋を構え、演出家広渡常敏を中心に数多くの劇団員が集まった。現在は、アクチュアルな演劇を信条として年間250〜300のステージを国内外で展開する。
 この芝居小屋はオープンスペース、ブラックボックス、客席数可変の前衛的な劇場…というのが特徴だが、長年応援し見守り続けてくれた大家さんの事情により惜しまれながら閉じることになった。移転先は未定だという。2019年3月の『クラカチット〜原子爆弾と大恋愛!?』(作/カレル・チャペック 演出/小森明子)がブレヒトの芝居小屋での最終公演となる。




ブレヒトについて
さて、広渡常敏が大きな影響を受けたブレヒトとはいかなる人物だろうか。ベルトルト・ブレヒト。ドイツの劇作家、詩人、演出家。ミュンヘン大学時代より文学活動を始め、1922年上演の『夜うつ太鼓』で脚光を浴びる。代表作に『三文オペラ』『肝っ玉お母とその子供たち』『ガリレイの生涯』など。第二次大戦中ナチスを逃れ亡命するが、戦後は東ドイツでベルリーナ・アンサンブルを設立し生涯の活動拠点とした(東京演劇アンサンブルはこの劇団名に因んでいる)。ブレヒトはさまざまな演劇理論を生み出し、世界の演劇界に多大な影響を及ぼした。

文化サロン的役割
 2006年に広渡常敏は倉林誠一郎賞、2007年劇団として優れた翻訳劇公演活動に贈られる湯浅芳子賞を受賞。それを機に基金を募り老朽化した芝居小屋を整備した。2006年に没した広渡常敏亡き後の劇団新生を図る取り組みでもあった。これまで劇団活動を続けられたのは多方面からの賛同や支援が得られたから。ブレヒトの芝居小屋は、夢を語り合い作品創作をするばかりでなく、人と人との出会いの場でもあった。移転後もこうした精神を受け継ぎ、新しい環境で文化人が集まる場を築いていくという。

檀さんも応援
 『檀流クッキング』の著者で石神井公園に住んだ檀一雄は、広渡常敏とは福岡時代から親交があった。その縁により創立当初の劇団に厨房一式が贈られた。今も重厚で貫録あるオーブンがど〜んと鎮座し、劇団員のおなかを満たしてきた歴史を物語っている。






櫻の森の満開の下
 最初から最後まで桜の花びらが舞う…そんな中で繰り広げられる男女の情念のぶつかり合い…桜の美しさに恐怖すら感じる坂口安吾原作の舞台化である。ニューヨーク、ソウル、ロンドンなど海外公演でも好評を博した。檀一雄の力添えもあって舞台化が実現した。







銀河鉄道の夜
 宮沢賢治の作品は幻想的、抽象的で舞台化は不可能とされていたが、1982年東京演劇アンサンブルにより世界初演された。『グスコー・ブドリの伝記』の上演が高く評価されてのこと。脚本・演出、広渡常敏、音楽、林光。初演以来、毎年ブレヒトの芝居小屋のクリスマス公演として上演し続けている。










30年前のエッセイ
 プチぶんか村の前身「OZかわら版」の1988年8月号に入江氏が「パンだけでなく、バラも」と題するエッセイを寄せている。一部引用。
 ――10年前ぼくたち東京演劇アンサンブルは、都心から離れて、練馬・武蔵関に「ブレヒトの芝居小屋」をつくり、そこにこもった。それはIWW(アメリカの労働運動:編集部註)の人たちのこころざしと、根がかよっているからだ。
 ぼくは大泉学園に30年近く住みついている。30年前、大泉は緑の畠がつづき、こどもの泳ぐ川があり、映画館だって2つもあった。いまは銀行とデパート、そしてスーパーばかり。どんどんパンだけの街になっていく。 
 9月ブレヒトの芝居小屋でIWWの運動家の芝居をする。題名は『ジョー・ヒル』。テーマは「パンだけでなく、バラも」。

作曲家 池辺晋一郎氏の話
この小屋が消えてしまうということは、単にこの劇団の問題だけじゃなくて(中略)日本の演劇文化全体に関わってくるのは明らかだと思います。そのために、残さなきゃいけない…」。

※東京演劇アンサンブルでは移転応援基金を募っています。協力したいという方は連絡を練馬区関町北4-35-17
03-3920-5232
http://www.tee.co.jp


<NEWS>
国立埼玉病院に新館開設

10月27日に一般対象の内覧会があり、新館への医療機器の導入、新設診療科や病棟が披露された。地域の中核病院として高度専門医療に対応すべく550床へと進化。立体駐車場と新館をつなぐ通路など一部工事は続くが新館での診療は11月5日に開始されている。新館増設に伴い、北の厨房という食堂もできた。048-462-1101


<展覧会>
堤陽子とフエゴの仲間のステンドグラス展

 国立埼玉病院本館1階にある大作『希望』を制作した堤陽子さん(練馬区谷原)が主宰する教室展。例年ステンドグラスがひときわ美しく映える12月に開催している。今年は19回目。ランプ、パネルなど30点余が並ぶ。なお、堤さんの作品は「サンアゼリアでお花見を〜さくら展」にも出品される。
12/8(土)〜13(木)  10時〜17時
(初日13時〜 最終日16時迄)
成増アートギャラリー(東武東上線
成増駅北口すぐ アリエス3階) 
03-3977-6061



<諺>
一富士二鷹三茄子(いちふじ にたか さんなすび)

 1月2日の初夢にみると縁起がいいといわれる。これには諸説あるが、江戸時代に駿河国において駿河名物を順に挙げた…というのが最有力説。この諺に倣った3店は…
@三珍 富士力食堂(新座市道場1-12-20 TEL:048-479-1333)
A大鷹ラーメン(和光市南1-10-19 TEL:048-466-1388)
Bなすび亭(渋谷区恵比寿南2-13-3 TEL:080-4622-0730)
※なすび亭については店主が清瀬出身という縁。(予約のみ)
写真は富士力食堂の「マウンテンチキンカツカリー」

<予告>
「サンアゼリアでお花見を」〜さくら展
和光市民文化センターサンアゼリアには見事な桜の緞帳がある。和光に住んだ画家三栖右嗣の原画をもとに京都で織られたもの。桜の緞帳に因んで開館25周年最後を飾るイベントとして開かれるのがこのさくら展だ。参加は、国立埼玉病院展示ボランティア「道の会」、プチぶんか村「さくら組」、学術関係、足立惠一氏など。「見て聴いて遊べる」趣向が盛りだくさんの6日間。桜が開花する前にサンアゼリア
でお花見を楽しみませんか?
2019年3/21(木祝)〜26(火)
サンアゼリア展示棟(和光市役所そば) 
詳細は次号で ※情報欄参照


  

ぶんか村エッセイ 113

ブレヒトの芝居小屋
入江洋佑 (東京演劇アンサンブル代表)

いりえ ようすけ
俳優座養成所三期生。1954年三期会を発足。創立メンバー。東京演劇アンサンブルの看板俳優として長く活躍し現在に至る。主な舞台出演作品は木下順二作『蛙昇天』、宮沢賢治作『グスコー・ブドリの伝記』、チェーホフ作『かもめ』、ブレヒト作『ガリレイの生涯』など。
練馬区大泉学園町在住

西武新宿線「武蔵関」駅北口から5分、新青梅街道に沿ったところに、ぼくたち東京演劇アンサンブルの「ブレヒトの芝居小屋」が在る。客席150人ぐらいの小劇場だが、日本でも数少いオープンスペース、完全なブラックボックスで欧米でも評価されている前衛的な小劇場だ。
「ブレヒト」といっても、いまや演劇好きな人でも知らない方もいるだろう。ナチズムと斗い、スターリニズムをおそらく世界で一番早く批判したドイツの演出家、劇作家で、チョット専門的になるが「異化」という新しい演劇理論で世界を動かした人の名前だ。ぼくたちはそのブレヒトに魅せられてこの「ブレヒトの芝居小屋」を建てたのだ。
その大切な大好きな劇場から来年3月の芝居を最後に新しい場所に出発しなければならない。なかでも36年間毎年続けて上演していたクリスマス公演、宮沢賢治作、広渡常敏演出、脚本のあの名作「銀河鉄道の夜」が今年で終りかと思うと心が沁みてくる。
友人の死を迎える辛い物語だが、死を前に友人の指し示した大きな暗闇に向って心の中で叫ぶジョバンニのことば「あの闇の中にほんとうの幸いがつまっているかも知れないんだ」。このことばは新しい年を迎えるぼくたちのエネルギーになっている。この世界中が眞っ暗闇に進もうとしているいま。
※特集に関連記事

 
■ぶんか情報
大泉学園ゆめりあホール・ギャラリー
〒178-0063 練馬区東大泉1-29-1(大泉学園駅北口)03-5947-2351 http://www.city.nerima.tokyo.jp/ 
●第10回 久保田啓子と仲間たち「語りと歌の午後」 シニア応援イベント 1/17(木) \1500 1030 090-3408-0310FTB
●企画歌声喫茶ともしびin大泉 1/22(火) \2000(貸歌集100) 950 懐かしい歌をご一緒に歌いましょう!リクエスト曲も 03-6907-3801

練馬文化センター(ホール・ギャラリー)
〒176-0001 練馬区練馬1-17-37(練馬駅北口)03-3993-3311 http://www.city.nerima.tokyo.jp/
●プラハ国立劇場オペラ モーツァルト「フィガロの結婚」 1/9(水) \ S14000 A11000 B7000 1830 全4幕 原語上演・日本語字幕付
●早稲田大学交響楽団ニューイヤーコンサート2019 1/19(土) \3500指定\2000自由 1700 歌劇「椿姫」抜粋 ワルツ「女学生」 070-3526-4179

T・ジョイSEIBU大泉 シアター
〒178-0063 練馬区東大泉2-34-1(オズスタジオシティ4F) 03-5933-0141 http://www.t-joy.net/
●かぞくいろ −RAILWAYわたしたちの出発− 11/30(金)〜 家族への思いがあふれ出す 出演/有村架純 國村準 桜庭みなみ
●こんな夜更けにバナナかよ12/28(金)〜 愛しき実話 この冬、最高の感動作! 原作/渡辺一史 監督/前田哲 出演/大泉洋 高畑充希 三浦春馬

和光市民文化センター サンアゼリア
〒351-0192和光市広沢 1-5(和光市駅徒歩15分) 048-468-7771 http://www.sunasalea.or.jp/
●オペラ彩 設立35年記念公演 オペラ「トスカ」 12/8(土)・9(日) \S10000A8000B7000C5000 1400 イタリア語上演・日本語字幕付
●シネサロン・和光第39回上映会『モリのいる場所』 12/13(木)\800(当日1000) 1400・1900 出演/山ア努 樹木希林 048-465-0331
●サンアゼリアでお花見を〜さくら展3/21(木祝)〜26(火)観覧無料1000〜1700展示・ワークショップ・パフォーマンス等 090-6034-3845特集面参照

その他のコンサート・展覧会・公開講座
●山田壽雄が描く園芸植物−牧野富太郎が信頼した画家
〜12/24(月)入館無料 930〜1630 牧野記念庭園記念館 火休 03-6904-6403
●いわさきちひろ生誕100年「Life展」作家で、母で つくる そだてる 長島有里枝〜1/31(木)\800(12/15入館無料)1000〜1700ちひろ美術館月休
●国立埼玉病院「道の会」展示12月「クリスマス」1月「新年」国立埼玉病院(和光市諏訪)本館2F絵画・書・写真・童画等 090-6034-3845 
●人間国宝・桂盛仁 金工の世界―江戸彫金の技 12/1(土)〜2/11(月祝)\300 1000〜1800 練馬区立美術館(中村橋) 月休 03-3577-1821
●まきもの作家Shiroco個展12/5(水)〜1/20(日)Vieill(ヴィエイユ)(江古田駅南口5分) マフラーやストールでなく「まきもの」月休 03-5996-3485
●『出没!アド街ック天国』第1186回 和光市 12/8(土)2100テレビ東京 和光市のBEST20と話題・情報満載 写真協力/足立惠一
●クリスマスコンサート〜吹奏楽とJAZZの調べ〜 12/8(土) 無料(要事前申込) 1530 立教大学新座キャンパス 048-471-6676
●堤陽子とフエゴの仲間のステンドグラス展 12/8(土)〜13(木)1000(初日1300)〜1700(最終1600)成増アートギャラリー 03-3977-6061
●フィルハーモニーコーア新座 第4回演奏会 12/9(日) \2000 1400新座市民会館(048-481-1111) 指揮/小川園江 090-7211-9239
●武蔵野音楽大学ウィンドアンサンブル演奏会 12/11(火)\1500 1830 東京芸術劇場(池袋) 「岸辺に打ち寄せる波」(世界初演) 03-3992-1120
●新座自援会チャリティコンサート12/16(日)\2000 1330新座市民会館 メンデルスゾーン「ヴァイオリン、ピアノと弦楽のための協奏曲」 048-482-5155
●市民公開講座「人間ドックで見つかる耳・鼻・頸部の病気」12/19(水) 無料(申込12/7迄) 1330 国立埼玉病院講堂 048-462-3062
●JAZZ NIGHT 12/21(金) \4000(バイキング飲食放題)1830開場1930開演 出演/田辺信男とイーストウインズ 朝霞ゆめぱれす 048-466-2525
●東京演劇アンサンブル「銀河鉄道の夜」 12/22(土)〜26(水) \3800(当日4500) 時間要問合 ブレヒトの芝居小屋 03-3920-5232
●第17回佐々木真フルートリサイタル12/23(日祝) \3500 1400王子ホール(銀座) ベートーヴェン「フルートソナタ変ロ長調」他 048-477-1313
●東京演劇アンサンブル「怒りをこめてふり返れ」 1/12(土) 1400 \1500 ブレヒトの芝居小屋(バス停関町北4丁目 3分) 03-3920-5232
●公開講座「女性のポテンシャルで叶える六次産業化と地域づくり」1/26(土) 受講無料(要申込) 1330十文字学園女子大学 048-477-0958
●博物館実習生模擬展示 1/26(土)〜2/6(水) 入館無料 930〜1630 跡見学園女子大学花蹊記念資料館(新座市中野) 048-478-0130
●特別展「激動の幕末in練馬」1/26(土)〜3/17(日)\300 900〜1800石神井公園ふるさと文化館(バス停三宝寺池すぐ) 月休 03-3996-4060
●鍋グランプリ和光大会(ご当地鍋まつり) 2/3(日)1000?1500(売切れ次第終了) 和光市役所市民広場 和光冬の風物詩 048-464-3552
●パークロード石神井「ねこフェス+ワン!」2/8(金)〜17(日)スタンプラリー・ライブ・ワークショップ等 03-3996-7419 次号参照


プチぶんか村設置箇所
・大吾        ・ナカタヤ       ・みゆずメソン
・松崎医院      ・梅の大谷       ・法台寺
・アミフランス    ・ポラン書房      ・FUURO  
・埼玉フィルハーモニー合唱団 ・うさぎの輪      ・オリエントハローズコーヒー
・こぐれ村      ・だちょう牧場並木屋  ・にこまーる並木
・花と美登利     ・青樹舎硝子工房    ・満月
・フエゴ       ・スペースKIRAKU    ・ふな与
・オリエンタルハート ・シューズハウスふみや ・たまてばこ
・工房まどい     ・ルジャンボン     ・だいこんブラス
・切り絵&そば野田  ・田中屋酒店      ・片山丸越
・ニューアマンド   ・クロシェットドゥボワ ・スペースM
・きもの処つるや   ・カルド        ・写団四季彩
・堀田ピアノ教室   ・呉服かたやま     ・フェルナンブーコ
・田倉燃料店     ・桃美会        ・武蔵野楽器
・ミョウオンサワハタザクラを守る会      ・石崎英数教室
・ふたば切り抜き紙版画教室          ・むらさきの会
・ボサノバ諸星裕美  ・武蔵野楽器      ・シネサロン和光
・社会保険労務士伊藤事務所          ・歌声喫茶ともしび
・後藤友禅染色工房  ・青山フラワー       ・アトレ企画
・スペース陶     ・辻ヨガ教室      ・美容室ひまわり
・シオン       ・ギャラリー北鎌倉物語 ・国立埼玉病院
・目白大学      ・藍学舎        ・ふるさと新座館
・伊澤正男&永原リタ ・石神井公園ふるさと文化館
・新座観光プラザ   ・片山農産物直売所   ・とれたて村石神井
・新倉ふるさと民家園 ・新座交響楽団     ・サンアゼリア
・跡見学園女子大学花蹊記念資料館       
・石神井公園サービスセンター ☆練馬・朝霞・志木・新座・和光各公共施設


制作協力スタッフ
  北口雄輝 丸木ますみ 岩下曜子 土井久代 杉山英明 早川緋紗 宇杉
  野火止洋一郎


 
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