■特集 ぶんか村的 「麒麟」の見方 


ぶんか村的「麒麟」の見方 
 放送中のNHK大河ドラマは『麒麟がくる』である。麒麟と聞けば「ゾウキリン」と答えてしまうのが「翔んで埼玉」県の新座市民。市のキャラクターは愛すべきゾウキリンだ。新座市に麒麟(ゾウキリン)がきたのは市制施行40周年を迎えた10年前。ちなみに今年は市制50周年に当たる。それはさておき「麒麟」はドラマチックに新座市に関わってくるのである。

新座の「片山」
 かつて大泉学園駅前から「片山小学校行」バスが出ていたの覚えているだろうか?その「片山」とは新座市にある地名で、片山については本紙2008年6月号特集「そうだ京都、探そう」でも紹介した。片山一帯は、昔から文化の中心地として栄えたところ。なぜ片山というのか、そしてなぜ文化の中心地といわれたのかを改めて探っていきたい。

片山氏について
 片山とは文字通り片方が山だからついたもので、その名は全国にみられる。新座の片山は鎌倉武士の片山氏が治めており、その氏(うじ)名が地名として定着したものである。
 片山氏は武蔵七党のうち最大勢力をもつ児玉党に属していた。片山二郎と名乗った秩父行時が片山氏のはじまりという。

なぜに京都へ
 時は鎌倉時代、承久の乱で戦功をなしたことから片山一族は地頭職を得て新座片山郷から京都の和知(わち)に移り住むこととなる。承久の乱とは鎌倉時代に起こった兵乱。後鳥羽上皇と鎌倉幕府執権の北条義時が争い、上皇側が敗れた。片山氏は北条側で戦った。
 さて和知の話に戻るが、今話題の丹波地方にある。和知は、明智光秀ゆかりの丹波に含まれることから、光秀と片山氏の関係は…とたどっていくと果たして光秀と片山氏には接点があった。片山氏の系図を見ると、丹波片山氏は光孝天皇の後裔で、武蔵国新座郡片山郷から起こった片山氏ということになる。関東からはるばる京都の丹波国和知荘に移り住んだのは、片山右馬允広忠であった。

和知の里
和知はJR山陰本線に沿うのどかな山里で、この周辺には写真のような摂丹(せったん)型民家と呼ばれる三角屋根の古民家が点在している。摂丹型民家は格式が高い人のすまいだったということだから、あるいは片山氏もこのような家に住んでいたかもしれない。現在こうした古民家を生かした町おこしがすすめられている。和知には今も片山姓が多く、片山一族の古い墓地には室町時代と思われる宝篋印塔や一石五輪塔などが残る。






明智光秀
 本能寺の変で主君の織田信長を討ち、反逆・逆臣・三日天下など負のイメージが強い人物だが、丹波では治水事業や城下の地税免除等の善政を行った名君として受け止められている。治政に長けたのみならず、教養高い文化人でもあり、領民から慕われていた。また、側室を置かず、正室の煕子(ひろこ)一人を愛した愛妻家ともいわれる。

光秀についた片山氏
 足利義昭と織田信長が反目すると、丹波は義昭に味方して信長と対立。天正2年(1575年)、光秀を大将とする織田軍の丹波攻めが開始され、丹波は明智勢を迎え撃つ立場となったが、当時和知を支配していた片山兵内康元・出野甚九郎・粟野久次の「和知三人衆」は光秀方についた。争いが平定した後、三人衆は光秀より亀山築城の人夫差し出しの命を受け、片山氏は最多の110人を送り、その結果与えられた知行高も最高であった。片山氏らはその後光秀に服し、織田政権の支配化に組み込まれていった。やがて片山氏ら土豪・地侍らは豊臣政権のなかで中世在地領主としての立場を失う。関が原での片山兵内の行動は定かではないが、徳川に所領の安堵を願い出てかなわなかったこともあり帰農することに。大坂の陣が起こると豊臣方から出陣オファーがくるが、兵内は豊臣家の翳りを見抜いていたので体よく断った。それが片山氏の武士としての最期の姿である。大坂落城の翌年、片山兵内康元はこの世を去った。
 新座から発祥した片山の姓は前述のように丹波和知に今日まで脈々と息づいてきた。場面が丹波に移るのはもっと先だがストーリーの展開が気になってくる。『麒麟がくる』が遠い話ではなく当地にも縁があるとなれば興味も倍増。光秀だけでなく、「片山氏」や「和知」にも思いを巡らせながら視聴してみるのもおもしろいだろう。



ゾウキリンの歌
♪オイラ新座のゾウキリン ちょっと不思議なゾウキリン〜
 とってもノリのいいメロディー。この歌を作詞作曲したのは新座市在住の鍵盤奏者HAYATOさん。音楽を通した社会貢献を…と東日本大震災の被災地の人々に寄り添う活動をしている。宮城県気仙沼市、南三陸町の応援ソングを作詞作曲する一方で地元新座市のキャラクター「ゾウキリンの歌」も作った。
♪ゾウなのか キリンなのか わからない〜
 雑木林に降臨したゾウキリンは、せせらぎと雑木林の街から生まれた不思議な生き物。新座に一風変わった麒麟がいるとしたら、それはゾウキリンだ。ゾウキリンはそろそろ10歳になる。ゾウキリンの歌はユーチューブで聴くことができるので、50周年を祝いながら歌ってみたら楽しいかも。

<京都福知山市 光秀紀行@>
福知山城

 1579年(天正7年)に明智光秀が築いたとされる。写真はJR山陰本線の車窓から見た福知山城。標高40mの台地に立つのでよく見える。三層四階の天守閣に小天守を備え、見る角度によって城の形が変わるのが特徴だ。1986年(昭和61年)の再建で、現在は郷土資料館として歴代城主の遺品を展示。自然石をそのまま利用した石垣は「野面(のづら)積み」「乱石積み」「穴太(あのう)積み」と呼ばれる。別名臥龍城。


<京都山崎 光秀紀行A>
天王山
 
「天下分け目の天王山」として有名な天王山に登ってきた。天王山はここ一番というときの勝負の代名詞。秀吉と光秀が戦ったところだ。麓の宝積寺に参拝したら住職に山頂まで50分と聞いてチャレンジすることに。標高わずか270mとはいえ結構な山道だ。秀吉が自軍の士気を高めるため旗印を掲げた「旗立松」や陶板絵画が道筋に。山頂付近には天守台跡・門跡・井戸跡・土塁跡・礎石等がある。ハイキングコースになっていて、登頂者には証明書を発行している。







<京都三条 光秀紀行B>
明智光秀の首塚

 山崎の天王山で秀吉に敗れた光秀が近江の坂本城へ向かう途中、伏見の小栗栖で地元農民に襲われ重傷を負い、自害して家臣に首を討たせた。その首は一旦隠されたがすぐ発見され、粟田口で数日間晒された。その後蹴上(けあげ)に塚が築かれ、江戸中期に現在地に移された。疎水の流れである三条白川沿いの民家裏にひっそりとお堂がたっている。梅宮町(明智明神前)




<滋賀県 光秀紀行C>
明智光秀一族の墓

 比叡山の琵琶湖側の麓、坂本にある天台真盛宗の総本山西教寺。信長の比叡山焼討ちの際に寺も焼失した。その後、近江国滋賀郡を与えられた光秀はこの地に坂本城を築き、寺の復興にも力を注いだ。戦死した部下の供養のため光秀が寄進した供養米の寄進状が現存する。境内には光秀の供養塔や光秀一族の墓が立っている。光秀の妻煕子の墓もあり、そばに芭蕉の句碑が立つ。芭蕉としては珍しく性を詠んだ句。
 月さびよ明智が妻の咄せむ

<音楽>
松原健之が歌うショパン

「別れの曲〜花吹雪〜」
 新型コロナウィルス感染拡大で卒業式の中止・縮小を余儀なくされ友との別れがままならなかった人たちへ。この季節に聴いてほしい一曲をご紹介しましょう。大人も胸キュンとなるはず。作家五木寛之さんや石神井に住んだ詩人松永伍一さん(故人)が応援し、芸名に一文字ずつその名を刻む歌手松原健之さんが歌っています。松原さんといえば、テレビの歌謡番組によく出演しているのでファンも多いことでしょう。彼の歌は楽曲もですが歌詞が秀逸。「松原健之ベストアルバム5」に納められているこの歌、ショパンに歌詞がつくとどんな感じになるのか。ユーチューブでも聴けますのでぜひどうぞ。
作詞/石原信一 作曲/ショパン 編曲/塩入俊哉 

<NEW>
新しい名前は「野火止RAUM」

TEE東京演劇アンサンブルより次のようなお知らせが届きました。「はじめまして。東京演劇アンサンブルです。わたしたちは1954年に創立した劇団で、昨年6月まで約40年間、練馬区関町の〈ブレヒトの芝居小屋〉という小劇場を拠点に活動してきました。昨年7月に新座市野火止に引っ越し、もと食品工場だった倉庫を劇団員の手で改装し、稽古場兼小劇場をつくり〈野火止RAUM〉と命名しました。(RAUM…ドイツ語で空間の意)これからはこの新座でがんばっていこうと思っております。どうぞよろしくお願いします!」 
※今後の公演等詳細についてはホームページでご確認ください。
http://www.tee.co.jp/
新座市野火止3-16-24 048-423-2521

<桜>
ところざわサクラタウンに行ってみた

新国立競技場「杜のスタジアム」を手がけた隈研吾氏による「ところざわサクラタウン」が東所沢に建築中と聞いて、メンバー有志が見に行ってきました。完成したら道路も混雑するだろうね…とナビにない目的地を探し、東所沢駅を目標に走り回っているうちに大工事中の現場に到達しました。変わった建物だからすぐにわかりました。まだ建物内には入れませんが、通りから外観を眺めるだけでも十分。住宅街に忽然と姿を現したサクラタウンは今年7月オープン予定です。(新座市ボランティア「緑とまちづくりの会」)

<映画>
日本アカデミー賞

 2020年最優秀作品賞、最優秀主演男優賞、最優秀主演女優賞の三冠を奪取した『新聞記者』は、歴史的快挙といわれていますね。新座市役所内でロケが行われ、主演男優賞を受賞した松坂桃李さんも新座市を来訪、庁舎内の1階にはサイン色紙が飾られています。もし映画を見る機会があればエンドロールの「撮影協力」にご注目!最初に「新座市役所」と出てきます。また、映画原作『新聞記者』(角川新書)の著者望月衣塑子さんは「練馬区南大泉で生まれ育った」「東京学芸大学附属大泉小学校に通い…」と同著に書いています。メチャ当地に縁がある作品でしょう? アカデミー賞では、話題の『翔んで埼玉』も作品賞や助演男優賞にノミネートされました。「新座」「朝霞」の幟が出てくる場面もあり郷土愛が沸きます。



ぶんか村エッセイ 121


吹奏楽、それは笑顔の音楽!
西田 裕(指揮者・新座ヴィクトリア吹奏楽団音楽監督)

にしだ ゆたか 1951年東京生まれ。高校の部活で始めた吹奏楽の虜となる。やがて指揮者となり苦節50年、人生棒に振る(?)道へ。ニューヨークのアポロ劇場、カーネギーホールなど、公演プロデュースで手腕を発揮。数多くのCD制作にも携わり、ラジオ番組「ザ・バンドワゴン」のパーソナリティーを20年間務めた。審査員や音楽ジャーナリスト、コンサートの司会者としても活動、国際的に著名な作曲家、指揮者、演奏家、吹奏楽団と親交を持つ。現在、新座ヴィクトリア吹奏楽団音楽監督。東村山市在住


 「もうやめてもいい。」と思ったのは三年前。吹奏楽に携わって既に五十余年。出発点は都立大泉高校の吹奏楽部だった。才能があった訳でもなく根気があった訳でもなく、毎日の部活に明け暮れている内にはまり込んでしまった。聴く演る創ると音楽の喜びは次第に広がって行く。練馬区の社会教育団体として、武蔵野吹奏楽団を設立し、仲間と共に創り上げるアンサンブルはやがて生き甲斐となる。
 クラシック畑で育ってきたが、ある時スティーヴィー・ワンダー氏との出会いにより音楽のジャンルの垣根が崩れ、ジャズ・シーンでの制作に関わった。カーネギーホールやアポロ劇場でのプロデュースの経験が大きな糧となった。
 そして、自分の専門分野である吹奏楽のラジオ番組を担当することになった。人前で話すのが苦手な私が、パーソナリティーとして二十年も。番組取材で海外の音楽家や楽団とも親しくなり、現在に至るが、もうさんざん吹奏楽に関わって来たので、音楽生活五十周年を機に引退したはずだった。ところが十一年間指導に当たった十文字学園女子大学吹奏楽部の卒業生が中心となって二年前に新座ヴィクトリア吹奏楽団が誕生し、またもやタクトを執ることになったのだ。この市民バンドの活動がアマったれなアマチュア・バンドだからこそ楽しいのだ。中学生から高齢者までが楽器を持って音楽に夢中になる。歳や学生以来のブランクなんて関係ない。  団員の笑顔がこぼれる初めての演奏が十二月二十七日(日)に新座市民会館で開かれる。約五十名、平均年齢五十歳。市民楽団のチャレンジを是非ご覧ください。(開催情報は本紙12月号に掲載予定)

 
■ぶんか情報


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イベントや行事の中止が混迷している折、今回の「ぶんか情報欄」は掲載を見送らせていただきます。本号は変則パターンで発行しました。

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