■特集 業平を想う秋の逍遥


〈ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くゝるとは〉  

 高樹のぶ子の小説のヒットにより改めて脚光を浴びることとなった在原業平(ありわらのなりひら)。そんな業平がなんと当地にも訪れたと伝わるのだが…。

在原業平とは
桓武天皇の系譜だけに高貴なお方。平安時代を代表する歌人で六歌仙・三十六歌仙の一人。「昔男ありけり」で有名な『伊勢物語』は古くから業平の物語とされてきた。超絶美男で性格は気まま、都を離れて奔放に東下りなんぞをやってのける。「業平橋」「言問橋」にその名が残るのはご存知だろう。『伊勢物語』は業平が詠んだ和歌を基にしたフィクションらしいが、真偽のほどはともかく、業平に平安ロマンを感じさせてもらえるなんて実に愉快だ。


当地における業平スポット
○氷川神社(練馬区大泉町)

 氷川神社は旧橋戸村の庄忠右衛門の宅の跡にあたる。境内の小社は業平に恋をした3人の女性(庄・春日・江古田)が彼を祀ったものとされる。

○少納言久保(練馬区大泉学園町)
 大泉学園町3丁目あたりは明治時代まで「少納言久保」と呼ばれていた。この少納言が業平に由来すると伝わっている。

○樋(ひ)の橋(新座市道場)
 志木の郡司長勝の娘「皐月の前」を誘い出した業平。草原に隠れた二人に、追手が火を放ったのがこの橋だという。





○業平塚(新座市平林寺境内)
 その火が止まったのが、今の平林寺の業平塚あたりとのこと。


(注)樋の橋と業平塚の写真は編集部が昭和時代に撮影したものである。
左の説明板は現存しないが「江戸名所図会によれば、野火を止めた塚のことを後世の好事家が伊勢物語より業平塚と名づけたもの…」と記されている。

○満行寺(新座市野寺)
 野寺が登場する業平の和歌がある。
〈武蔵野の 野寺の鐘の 聲聞けば 遠近(おちこち)人ぞ 道いそぐらん〉

○笠懸けの松(東久留米市多聞寺境内)
 藤原氏の娘「花鳥」と駆け落ちする業平。待ち合わせしたのが「笠松」と呼ばれたこの地。多聞寺境内の黒松に笠をかけて休んだと伝わる。このクロマツは市の名木百選のひとつに指定されている。また東久留米市南沢には「笠松坂」という信号もある。

業平に導かれて京都「十輪寺」へ
 洛西の大原野にある通称「なりひら寺」が十輪寺。このあたりは彼の祖父にあたる桓武天皇が奈良から遷都した長岡京エリア。小塩山麓にひろがる静かな山里だ。皇族・貴族が鷹狩りなどを優雅に楽しんでいたというから業平もその一人であったろう。彼は晩年この寺に隠棲した(寺伝)。
 十輪寺にお参りすると、恋愛成就、子授け、安産の御利益があるそうだ。


屋根の形がユニークな十輪寺本堂


業平墓
 この宝篋印塔が業平の墓。イケメン業平ここに眠る。(写真上)

塩竈(しおがま) 
 恋多き業平は塩を焼いて藤原高子への思いを伝えていたという。十輪寺の裏山に塩竈の旧跡がある。


業平墓 

塩竃


「なりひら桜」と「なりひらもみじ」
 2014年のJR東海「そうだ京都、行こう」のCMに登場した桜が十輪寺の「なりひら桜」。樹齢約200年のしだれ桜は中庭を覆うみごとな1本桜。そして秋には「なりひらもみじ」が境内を彩り、紅葉の穴場として人気上昇中!




■文化情報


※必ず確かめてからお出かけください

●短編劇集 秋カフェ『時いろいろ』
10/3(日)まで 時間要問合 2000円
東中野・RAFT(中野坂上駅10分)
080-9676-3553
ウィンドミルオフィス・劇団桃唄309
www.momouta.org

●思い出のとしまえん
開催中 11/7(日)まで 観覧無料 9時〜18時 月曜休館
練馬区立石神井公園ふるさと文化館 練馬区石神井町5-12-16
03-3996-4060 

●映画
『護(まも)られなかった者たちへ』
10/1(金)〜  原作/中山七里
監督/瀬々敬久 主題歌/桑田佳祐
キャスト/佐藤健 阿部寛 清原果耶
T・ジョイSEIBU大泉ほか
※魂が、泣く。号泣必至の社会派ミステリー
※原作者は平林寺つながり=花園大学OB

●ツツジ・シャクナゲ大図譜 〜日本の野生種を求めて〜
10/2(土)〜12/5(日) 入場無料
9時30分〜16時30分 火曜休館
練馬区東大泉6・34・4(大泉学園駅5分)
練馬区立牧野記念庭園記念館
03-6904-6403

●「詩人・松永伍一の戯画絵&大野忠雄のアイルランドの世界」展
10/21(木)〜26(火) 11時〜18時
ギャラリー・スペースM  志木市本町1-2-2 048-474-8486
※「松永伍一先生は福岡県大木町の花宗中学
時代の恩師です。上京後、拙宅から車で約30分の上石神井に住んでいることがわかり、亡くなる寸前まで交流が続きました。遺族に託された絵画作品の中から40点を展示します。大野忠雄先生とは「アジア・アフリカ国際資料センター」で知人を介してお会いし、生涯独身だった先生の遺作品を不思議なご縁で管理することになりました。かけがえのないお二人の展覧会です」。近藤征治(新座市)

●陶木展
10/28(木)〜11/2(火) 11時〜18時
ギャラリー・スペースM  志木市本町1-2-2 048-474-8486 
※菊地吉紀創作陶器50点。独自の二度焼

●わこう今昔写真展
10/29(金)〜11/4(木)  入場無料
10時〜16時30分(最終日15時)
和光市民文化センターサンアゼリア展示棟
048-468-7771
※足立惠一ほか 昭和の写真200点

●イブニング・クラシック
11/4(木) 19時 3000円
大泉学園ゆめりあホール(大泉学園駅北口)
090-5317-9549
出演/高畠伸吾・内山侑紀・高橋健介
曲目/プッチーニ『ラ・ボエーム』より
ヴェルディ『リゴレット』より 他

三栖右嗣(みすゆうじ)特別展
〜ヤオコー川越美術館コレクション〜
11/27(土)〜12/6(月) 入場無料 10時〜16時30分 
和光市民文化センターサンアゼリア 048-468-7771
※和光に住んだ和光ゆかりの画家
※必ず確かめてからお出かけください


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