今放送中のNHK大河ドラマは『鎌倉殿の13人』で、北条義時(小栗旬)が主人公だ。カッコ内はドラマでの俳優。
源頼朝(大泉洋)による鎌倉幕府の成立は、1192年、「いい国つくろう鎌倉幕府」と覚えたものだが、今はその成立を1185年などと習うようである。
当時の関東平野は、各地に土着の武士の軍団が勢力を持ち、中央の朝廷や源氏・平家の権力闘争に巻き込まれていた。そのころ、わがまちはどのようであったのだろうか。
鎌倉道の間道
源頼朝が拠点とした鎌倉に向かって、各地から多くの人の流れが起こった。
西からは東海道、東は東京湾の海路で千葉を経て東北方面へと結ばれていた。関東北部とは武蔵野を抜ける幾筋かの鎌倉街道で南北に結ばれていた。
その一筋が、荒川をまたいでさいたま市と志木市結ぶ「羽根倉橋」から清瀬市に向かう鎌倉街道の間道である。ススキの原野が広がる中を、個性的な坂東武者たちは、「いざ鎌倉!」と駆け抜けていたのである。
比企能員(ひきよしかず)
1199年に頼朝が死去し、北条一族が台頭してくると、1203年には13人のリーダーの一人である比企能員(佐藤二朗)の乱が起きる。比企氏は関東西部の比企丘陵(現在の東松山エリア)に基盤を持った一族
だ。頼朝の父源義朝のころから組して、のちに能員は鎌倉幕府の重責を担うようになった。その母は比企尼(草笛光子)である。頼朝の後継者争いの中、北条氏によって一族は滅ぼされた。この能員もまた、所領と鎌倉を結ぶこの間道を行き来していたはずだ。
畠山重忠(はたけやましげただ)
1204年幕府二代目源頼家が暗殺。翌年には畠山重忠(中川大志)の乱が起こる。重忠は北条義時の父、時政(坂東彌十郎)との確執により滅ぼされる。畠山一族は深谷市一帯を勢力としていた。大河前作『青天を衝け』ゆかりの地だ。重忠は源頼朝に仕え、一の谷の合戦などで大活躍する13人のリーダーの一人で、馬を背負って崖を駆け下りた武勇伝は有名だ。
彼は武蔵嵐山に館を構え、鎌倉街道を頻繁に行き来したという。最後は地元にいた彼は、謀略によって、この道を急ぎ鎌倉に向かう途中、北条義時らに討ち取られてしまった。
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馬を担いだ重忠 |
鎌倉道の名残
●志木市の鎌倉道
志木市役所近くの郷土資料館付近に鎌倉街道の一里塚跡がある。
●三芳町の鎌倉道
柳瀬川の崖に沿って通る道。新座市中野から三芳町竹間沢を経て富士見市針ヶ谷まで。竹間沢の古井戸地蔵のあたりは、家並みと崖に挟まれて、当時の面影が残る。加えて、川越街道に並行して藤久保を通る道も「鎌倉通り」と呼ばれている。
●普光明寺(新座市大和田)
鎌倉街道の間道は志木市付近からは柳瀬川沿いの道となる。その途中にある古刹で、今も鎌倉街道の小路のそばに立つ。千体地蔵が名高い、閑静な寺である。
●桜株(新座市)
通称志木街道のケヤキ並木近くに一里塚の名残りと思われる石の遺物がある。頼朝の曽祖父にあたる八幡太郎源義家が東北征伐の際にここで休憩したとの伝説がある。
千葉常胤(ちばつねたね)
房総半島土着の千葉氏。その常胤(岡本信人)は、鎌倉へ向かう頼朝の軍にはせ参じる。常胤の娘、久米御前は三代将軍源実朝(柿澤勇人)の側室であった。1219年、実朝が鶴岡八幡宮の大イチョウの場所で暗殺されると新座に身を寄せる。
●法臺寺
新座市道場の法臺寺は久米御前ゆかりの寺でもあり、境内には久米御前像が立つ。久米御前のお供で当地にやってきたのが本多・浅海・並木・貫井の4氏で、その姓は今も残る。
豊島清元(としまきよもと)
1180年、房総から鎌倉に向かう頼朝軍。滝野川(北区)付近を拠点としていた豊島清元は頼朝の傘下に入って活躍する。後は北条に従って、時宗の時には石神井郷を手に入れる。
●石神井城跡
石神井公園の三宝寺池の南にある豊島氏の城館跡。土塁と空堀が残る。鎌倉時代中期〜末期頃の築城と考えられ、のちに太田道灌によって落城する。
難波田(なんばた)氏
1221年の承久の乱で活躍した金子高範。入間を拠点としていた。戦功に対する恩賞で難波田の地を得て、難波田氏を名乗る。のちに1350年の観応擾乱(かんのうのじょうらん)で難波田九郎三郎が羽根倉合戦で戦う。この羽根倉は鎌倉街道の一部である。現在は浦和所沢街道の橋となっている。
●難波田城公園資料館
富士見市下南畑の、難波田城公園内にある。難波田氏の城館跡で、展示資料のほか、城跡ゾーンや古民家ゾーンもある。
※鎌倉へは池袋から湘南新宿ラインで。春と秋の土休日なら北朝霞から臨時列車「ホリデイ快速鎌倉」も利用できる。
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(左)在りし日の大イチョウ (中央)久米御前像 (右)難波田城公園 |
線量計が鳴る
本号エッセイの中村敦夫さんは2017年に朗読劇『線量計が鳴る』を完成させ、全国で公演を行ってきた。元・原発技師になりきっての名舞台。まだ終わっていない原発問題がより深く理解できる。多くの人に見てほしいと願う。クラウドファンディングにより今年3月DVDに映像化された。定価1500円+税 問合先:西日本出版社06-6338-3078
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鎌倉武士、奈良に現る?
奈良県の新堂遺跡(橿原市)から出土した鎌倉時代の珍しい木製人形のこと。長さ9p、直径1.4pの小さなもので、侍烏帽子(さむらいえぼし)をかぶり、髭を蓄えていることから鎌倉武士をモチーフにしたのではないかといわれる。玩具なのかそれとも祭祀用なのかは不明。
もともと胴体があって離れたとも推定される。ユーモラスな表情がゆるキャラみたいに見えなくもない。鎌倉殿の13人の誰に似ているか重ねてみるのもおもしろい。
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鎌倉の花だよりを発信している写真家「花追い人」こと松本立夫さん。国立埼玉病院ギャラリー「道の会」に先駆け、ボランティアで院内展示を務めた開拓者。退職後は練馬から鎌倉に転居して「ギャラリー北鎌倉物語」を開設した。写真展を主に作品展や写真指導をしている。鎌倉は被
写体が豊富な土地柄。住民ならではの視点でとらえた作品の数々が鑑賞できるサイトにぜひアクセスしてみよう!
www.hanaoibito.jp
朝ドラ決定?日本植物学の父
牧野富太郎
〈NHK朝ドラに「牧野富太郎の生涯」を〉
とチラシ裏面にある。練馬周辺で署名運動が行われたのは2019年春。富太郎の生まれ故郷高知と記念館のある練馬との願いが叶い、来春から『らんまん』が始まることとなった。作・長田育恵、主演・神木隆之介。1926年から約30年余りを過ごした大泉学園での暮らしぶりも描かれるはずだ。放送前に牧野記念庭園記念館を訪ねておくのも。署名してくださった読者のみなさん、ありがとうございました。
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