■特集 銀河鉄道に乗って


 今年は宮沢賢治没後90年。賢治から90年を経て、「銀河鉄道999」の作者・松本零士さんが2月13日に亡くなられた。福岡から夜行列車で上京したとき「まるで銀河鉄道に乗っているかのようだった…」という。大泉に住んだ偉大な漫画家、松本零士さんを偲ぶ。


松本零士さん

大泉に引き寄せられて
 「仕事をする上での利便性を考えて1963年、25歳のときに大泉に引越した。一面ススキの原っぱみたいで「えらい所に来た」と思った。駅前から朝霞へ抜けるバス通りは北園から先が砂利道で、あたりは田畑と雑木林に覆われていた。自宅の窓から東映動画の建物が見える、駅をはさんで牧野富太郎博士の旧居がある…。「何か」に導かれて大泉に住んだのだろうか。『銀河鉄道999』『宇宙戦艦ヤマト』『宇宙海賊ハーロック』はじめアニメーションも、イラストも種々のデザインもこの大泉で生まれた。ヘリコプターから練馬を見下ろしたことがあるが自然が豊かで緑が多い。この街が好きだからここを離れるつもりはない」。

手塚治虫さんとの縁
 「アニメを志す遠い触媒となったのは明石の映画館で見た漫画映画『くもとちゅーりっぷ』。1943年、5歳のとき。手塚さんが同じ映画館で同じ映画を見ていたことがずっと後になってわかった」。
※手塚氏は新座、松本氏は大泉が最後の仕事場となった。

松本清張さんとの縁
 清張さんが小倉から上京したのは1953年 44歳のとき。練馬区関町と上石神井に約7年間住み、『点と線』『ゼロの焦点』『砂の器』『球形の荒野』等を書いた。本紙特集「松本ふたり」では小倉と練馬を共有する両氏を取り上げたが、その際「なんだか顔が清張さんに似ているような気がする…」と。

牧野富太郎博士との縁
 「小学4、5年のころ、小倉の古本屋で偶然見つけて購入した牧野博士の『原色少年少女植物図鑑』は、愛用し続けた私にとってのバイブル。この図鑑を参考にした『蜜蜂の冒険』が、15歳のときに「漫画少年」第1回長編漫画新人王を受賞した。だから牧野博士はいわば恩師。大泉に越してきたあと、近くに牧野博士の旧居があることを知り驚いた。博士に魅かれて牧野庭園には何度も通った」。

松本零士さんの夢
 「漫画家、小説家、イラストレーターが大挙して家やアトリエ、スタジオを構えているのが大泉。大泉こそ日本の漫画界の本拠である。それを示すランドタワーの1本も、1棟の記念館もないのが無念でならない。先人の遺徳を偲び、創作・創造、映像の道を志す若い世代にとってのパワフルな『創作、映像アニメーション、シンボル館』があってもよいのではないか。大泉をついのすみかと決めたにとって、それが万感の想いを込めた願いで、夢である」。

『るるぶ練馬区』
 発行当時、大評判となった『るるぶ練馬区』に、練馬を代表する人物として松本零士さんが登場。そうした縁でJTB時刻表通巻999号の表紙も『銀河鉄道999』が飾った。


大泉アニメゲート
 大泉学園駅北口に練馬にちなむ人気漫画の主人公の像が並び、『銀河鉄道999』からメーテルと鉄郎も立っている。


アニメゲートオープンセレモニーにて
右端にメーテルの後ろ姿が見える

だいこんブラスの演奏で
 地元のアマチュアブラスバンド「だいこんブラス」のレパートリーに松本零士さんのアニメ曲『銀河鉄道999』『宇宙戦艦ヤマト』があり、「数えきれないほど演奏しました。松本零士さんの前で演奏したこともあります」とは元事務局長の岸田孝子さん。

ゆめーてるちゃん
 東大泉商栄会は松本零士さんの好意により「大泉ゆめ―てる商店街」というニックネームがつき、松本さんデザインによるキャラクター「ゆめーてるちゃん」が誕生した。ほかに999の列車を乗せた街灯が数か所見られる。


999列車の取付作業中 2007年8月


「999」に出合う街
 大泉学園駅の駅メロは『銀河鉄道999』。改札付近には車掌さん像、三井住友銀行2階入口にメーテル・鉄郎像がある。北口タクシー乗り場近くにはビッグな999の看板。ゆめーてるどら焼きを売る和菓子店(菊屋)も。大泉の街は探せば銀河鉄道がいっぱいだ。

※本特集は松本氏へのインタビューおよび寄稿をもとに編集部がまとめたのもです。



■ぶんか村エッセイ128



牧野富太郎―草木とともに
田中純子(練馬区立牧野記念庭園学芸員)

たなか じゅんこ 2010年の記念館リニューアルオープン以来学芸員として勤務。牧野富太郎博士の顕彰に努め博士の業績や生涯の研究を行う。博士や植物に関わった人物などをテーマとした企画展の展示を手掛けている。著書に『牧野植物図鑑原図集』(北隆館2020年)、『牧野万葉植物図鑑』(北隆館 2022年)、『もっと知りたい牧野富太郎』(東京美術 2023年)など。日本櫻学会会員

 4月3日から、NHKの連続テレビ小説『らんまん』が放映されます。主人公・槙野万太郎のモデルは、植物学者牧野富太郎博士です。
 博士は、94年の長い人生を植物の研究に捧げ、日本の植物分類学の発展に貢献しました。各地に出かけ植物を採集し、押し葉にした標本の数は40万点ともいわれ、正確な数が把握できないほどです。出会った植物について博士はその特徴を文章や図で表し、学名をつけて専門の雑誌に発表し、また『大日本植物志』などの図説集を出版しました。それらの成果がやがて『牧野日本植物図鑑』に結晶しました。その出版は昭和15年、博士78歳のときでした。
 牧野博士は高知県で生まれ育ち、明治26年から助手(後に講師)として東京大学に勤めていたことから大学の近くに暮らし、大正年間は渋谷で生活し、同15年に現在の練馬区立牧野記念庭園の所在地に居を定め、亡くなる昭和32年まで暮らしました。武蔵野の面影が残る雑木林に家を建て、ゆくゆくは植物園にしようという夢を抱いて、この庭に博士が採集したり各地から送られたりした珍しい植物が植えられていきました。
 博士の没後、邸宅と庭が整備され翌33年から記念庭園として一般に公開されました。長年苦労をかけた妻・壽衛(すえ)に博士が感謝の思いを込めて名づけたスエコザサや練馬の名木に指定されるヘラノキなど博士ゆかりの植物が来園者を迎えています。
 博士の没後、邸宅と庭が整備され翌33年から記念庭園として一般に公開されました。長年苦労をかけた妻・壽衛(すえ)に博士が感謝の思いを込めて名づけたスエコザサや練馬の名木に指定されるヘラノキなど博士ゆかりの植物が来園者を迎えています。



■コラム


大泉と小倉で追悼
 
松本零士さんの訃報が流れると大泉学園駅に献花台が設けられ、老若男女が次々と別れを惜しんだ。少年時代を過ごした北九州小倉でも北九州市発展のために協力を惜しまなかった氏を偲び哀悼の意が広まった。



メーテルと鉄郎像
(左:大泉学園駅 右:JR小倉駅)

ぷらっとあさひ
 
新座あたごに隣接する清瀬市の旭が丘団地は是枝裕和監督が住んでいたことで有名。阿部寛主演映画『海よりもまだ深く』には「にいバス」バス停やホルン洋菓子店が映し出された。昨年、商店街の「あさひがおかぐりーんモール」にコミュニティスペース・レンタルスペースができた。日本女子大学住居学科篠原研究室と日本総合住生活鰍フ産学共同による取り組みで、多様な世代がそれぞれの知識や特技を生かし相互に思いやりを持ち、ゆるやかにつながれるように…というモデル施設。文化活動の拠点になるかも。


スタッフ在室日/金曜日11:00〜17:00

情報サイト「とっておきの練馬」
 
こんな商品があったのね!練馬をモチーフとする優れたグッズを知っていますか?地元愛がたっぷり込められたオリジナル商品を、製作者や関係者への綿密な取材のもと、開発に至るまでの苦労や思いなどがよく説明されている。今回は「夢泉工房の陶器」、「学園桜染シリーズ」、「練馬大根ペンケース」、「なかむら箸」の4件。ねりコレ商品とともに地元住民にとっては興味津々のグッズばかり。アクセスにはnerimakanko.jpから「練馬生まれのステキなグッズ特集?開発には思いが詰まっている!」を選んでクリック。

松永伍一没後15年記念企画展
 
昨春の新潟北方文化博物館での「詩人松永伍一戯画〜in新潟・瞽女」展に続き、今年は松永先生ゆかりの地、軽井沢で「松永伍一没後15年記念企画展」が開かれる。先生は北軽井沢に山小屋(愛娘にちなんで「泉の城」)を建て、毎年夏の2カ月は1日に17〜20枚の原稿を執筆。山を下りる頃には原稿が完成し一冊の本になった。まさに軽井沢と縁が深い詩人である。今回の展示内容は、著作を中心に『日本の子守唄』蒐集で使った取材ノート、日本の子守歌のレコード、直筆の原稿・色紙・手紙など。特に『一揆論』の生原稿は美文字で書かれ見ごたえ十分。さらに戯画も数多く展示する。初夏の風に吹かれに軽井沢高原文庫まで足を運んでみませんか?(新座市 近藤征治) ※おでかけ情報欄参照


■おでかけ情報


あらかじめ確かめてからお出かけください。
定休日が祝日の場合は翌日休となる等もあります。

●野の花スケッチ作品展
開催中〜4/4(火) 9:00〜17:30(最終日15:30)
ゆめりあギャラリー(大泉学園駅北口) 03-5933
-1330(太田) ※60〜95歳シニア30名112点

●猫の絵描き高橋行雄展
開催中〜4/12(水) 11:00〜18:00(最終日16:00)
木曜定休 オリエンタルハート 練馬区石神井町3-16-17(石神井公園駅3分) 03-3996-7419 

●星占いの星座たち
開催中〜5/28(日) 毎週日曜日11:00・15:00の2回投映(30分前から受付) 200円 朝霞市中央公民館プラネタリウム 朝霞市青葉台1-7-1(朝霞駅10分) 
048-465-7272

●ギャラリー展示「朝霞の神社と古事記のおはなし」
開催中〜6/4(日)9:00〜17:00入館無料 朝霞市博物館朝霞市岡2-7-22(朝霞台駅15分) 048-469-2285

●ちひろ 光の彩(いろどり)
開催中〜6/18(日) 10:00〜16:00月曜休館 1000円 ちひろ美術館 練馬区下石神井4-7-2 (上井草駅7分) 03-3995-0612

●児島壽美滋&藤田三保子二人展
4/1(土)〜30(日) 9:00〜17:00(最終日12:00) 木曜定休 入場無料 結城蔵美館 茨城県結城市結城1330 0296-54-5123 ※藤田三保子氏は練馬区在住

●夏井いつき 句会ライブ
4/8(土) 13:30 2800円(当日500円増) 新座市民会館 新座市野火止1-1-2(新座市役所から3分) 048-481-1111 ※人気テレビ番組「プレバト」でおなじみ

●産業で振り返る練馬の近代
4/8(土)〜6/4(日) 9:00〜18:00 月曜休館
観覧無料 石神井公園ふるさと文化館 練馬区石神井町5-12-16(石神井公園駅15分) 03-3996-4060

●SWING WONDERLAND 2023
JAZZ LIVE "April inゆめぱれす"
4/15(土)13:30 500円 朝霞市民会館ゆめぱれす
朝霞市本町1-26-1( 朝霞駅11分) 048-466-2525
※スペシャルゲスト田辺信男・大野めぐみ

●スプリングコンサート
〜歌曲が織りなす鮮やかな色合い〜
4/16(日) 13:00  3000円  ふるさと新座館(JR新座駅10分)  PASSIONE事務局 0120-921-881
曲目/シュトラウス「春の声」パーセル「薔薇の花より芳しく」トスティ「四月」ほか※ソプラノ・テノール・ピアノ

牧野富太郎 草木とともに
4/22(土)〜10/9(月) 9:30〜16:30 火曜休館 入場無料 牧野記念庭園記念館 練馬区東大泉6-34-4(大泉学園駅5分) 03-6904-6403 ※エッセイ参照

Natural LIFE Marche (ナチュラル ライフ マルシェ)
〜体と生活、環境に優しいマルシェ〜
4/22(土)11:00〜16:00 入場無料 ぷらっとあさひ
(旭が丘団地 ぐりーんモール内) ※無添加・オーガニッ
ク商品、地域野菜使用菓子、ハンドメイド雑貨、食品ロス
削減活動関連品など orideco737@gmail.com 金田

生誕120年 大沢昌助展
4/29(土)〜6/18(日) 10:00〜18:00 1000円 
月曜休館 練馬区立美術館 練馬区貫井1-36-16(中村橋駅3分) 03-3577-1821

映画「銀河鉄道の父」
5/5(金・祝)〜 T・ジョイSEIBU大泉ほか
監督/成島出 原作/門井慶喜 音楽/海田庄吾 
出演/役所広司 菅田将暉 森七菜 豊田裕大 田中泯
※賢治没後90年の時を超えて伝えたい、笑いと涙の宮沢家の物語

薬膳を楽しく知ろう
〜美味しく食べて未病先防〜

5/7(日) 10:00・14:00の2回 1800円(薬膳茶・菓子付) ギャラリースペースM 志木市本町1-2-2 
048-474-8486 ※講師/原田裕子(薬膳サロン主宰)

写団「四季彩」写真展
5/7(日)〜14(日) 10:00(初日12:00)〜16:30(最終日15:00) 和光市中央公民館 和光市中央1-7-27
070-5564-4769(足立惠一) ※8名40点

東京演劇アンサンブル「走れメロス」
5/19(金)19:00・20(土)14:00 2500円(当日3000円) 新座市民会館(新座市役所から3分)
048-481-1111 ※作/太宰治 脚本/広渡常敏

松永伍一没後15年記念企画展
5/27(土)〜7/10(月) 9:00〜17:00 800円(6/10のイベントは+700円)会期中無休 軽井沢高原文庫 軽井沢町長倉塩沢202-3 0267-45-1175※元練馬区民の詩人松永伍一は練馬区の歌「わが町・練馬」を補作した
 
編集後記 WBC優勝当日の朝日夕刊と翌日朝刊一面トップ記事を書いたのは、かつて新座市記者クラブ詰めだったSYさん。マイアミからの感動的な記事をありがとう!


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