■吉澤章折り紙の世界


 練馬にこんなすばらしい折り紙作家がいたのをご存知だろうか?その名は吉澤章。日本の折り紙を「ORIGAMI」として世界に広めた偉大な人物だ。

折り紙への第一歩
 幼少のころ、近所のお姉さんが作ってくれた折り紙の舟がきっかけ。壊れた舟を元通りに直して病気の母親に見せると喜んだ。さらに母を元気づけようと工夫を重ね、自分の折った折り紙が人々を元気にできる…と信じて94歳までの生涯を折り紙研究に勤しむこととなった。この話は光村図書の教科書小学2年の道徳にも収められている。


吉澤章氏


@自画像


芸術の域にまで
 ともすれば折り紙は子どもの遊びと思われがちだが、吉澤作品は造形芸術にまで極め内外、特に海外での評価が高い。1955年オランダのアムステルダムでの個展を皮切りに、外務省および国際交流基金の要請により世界数十か国を訪問し、作品展、講演、ワークショップで折り紙による国際親善に努めた。吉澤作品の展覧会は想像を絶するほどの客を動員している。
 ただ一枚の正方形の紙が、宙を舞い魔法のように魂のこもった超絶技巧ともいえる作品となっていく…。観察、研究しつくして生まれたそれらに接したら「たかが折り紙」という人はいないはずだ。例えば自画像(写真@)を見てほしい。このマスクはご覧の通り生き写し。一枚の紙でここまで表現できるとは脅威ですらある。
 また、人気作品の一つはゴリラだが、吉澤ゴリラは力強くもどこか優しげで、ユーモラス。この作品を表紙とした厚さ3pほどの重厚な図録が英語・フランス語・ドイツ語・イタリア語に翻訳されている。



Asahi shinbun



夏だから「蝉」と「蟹」
 3万点に及ぶ遺作の中から蝉と蟹を選ばせてもらった。蝉は、6本の脚、目や触覚まで精密に作られており、この形にたどり着くまで600回以上試行錯誤を重ね、完成までに23年もかかったそうだ。
蟹は熟練の人でも「団子になってしまう」というほど難しい。


Asahi shinbun

吉澤章折り紙ギャラリー
 吉澤作品を鑑賞するには西武池袋線東久留米駅近くのマンション2階へ。作品が常設されている。また作品を保管するほか、国際折り紙研究会の会員による作品も数多く配置され、折り紙の技巧を間近に見ることができる。作品の折り方については吉澤氏本人が正確な折り図を作成し残しているため、難易度にもよるが、やさしいものならチャレンジしてみると楽しいだろう。折り紙ギャラリーでは折り方の載った冊子を販売している。吉澤氏の活動に関する掲示物や書籍、訪問した50か国以上を記した世界地図なども見ごたえがある。
入館200円(小中学生100円) 10時30分〜16時 水木・第3日曜休館
東久留米市東本町14-25カムレイド202号室
東久留米駅東口3分
042-420-4843
※9月30日まで「佐藤三郎二
机折り紙展」を開催(写真A) 終了しました。



写真A


各地での展覧会
代表的な作品のうち数百点は王子の「紙の博物館」、三島の「佐野美術館」、吉澤氏の郷里栃木県上三川町に寄贈されている。その3カ所では定期的に吉澤作品の展覧会を企画。9月2日からは佐野美術館で展覧会が始まる。

命宿るORIGAMI 吉澤章創作折り紙の世界
キリン、ゾウ、ペンギン、カニ、カマキリなどの動物や昆虫のほか恐竜ティラノザウルスなど。本紙エッセイの塩川誠さんによるイベント「スライドレクチャー&折り紙の世界」も。

コラム
「野火止桜」が学会誌に
 ちょうど20年前の2003年5月8日、5本の桜の木が新座市の一角に植樹された。現在は新座駅南口公園となっている。植樹されたうちの3本は人知れず毎年咲き誇ってきたが、本年3月に樹名板と説明板が設置された。今年の満開時が卒業時と重なったため、桜を背景に記念撮影する家族のほほえましい姿も見られた。野火止用水開削350年記念の植樹であることから「野火止桜」の名称がつき、日本櫻学会発刊の『櫻の科学』第24号でも紹介された。学名は雅(みやび)、流通名はプリンセス雅、呼称が野火止桜である。これからは野火の里に咲く「野火止桜」として愛されていくに違いない。

映画「みとりし」(看取り士)上映と講演のこと
数年前、柴田久美子著『私は、看取り士』で「人が亡くなる時、ものすごい量のエネルギーを放出してそばに居る人を喜びと感動で満たす」という話を読み興味を持ちました。その後映画『みとりし』ができたので観て地元和光でも皆で鑑賞の機会をと思ったのです。半年間、夫の闘病で死と向き合って過ごす内「看取り士講座」を受講。「プラスの死生観」を学び、「旅立ちの時」が愛に満ちた互いの魂を癒す千載一遇の機会だと考えるようになりました。(鍵和田美津子)
※おでかけ情報欄参照

広がる灯明まつり
 ボランティアグループ「チーム・キャロット」の活動として2014年に始まった灯明まつり。紙袋に子どもたちの夢や願いを書(描)いて灯りをともすという行事。当初300個でスタートしたのが今年は計7000個以上と数を増している。子どもたちの夢や願いが夜空に届きますように!
★8/20道場町内会夏祭り750個 
★9/23新座市商工会50周年記念イベント「輝き」市役所駐車場 市内全小・中学校参加5000個 
★10/28 第8回野火止用水灯明まつり ふるさと新座館(野火止公民館) 1000個 
★11/11新堀 個数未定 

俳優今野浩喜さん大活躍
 朝ドラ『らんまん』で、当初は主人公の槙野万太郎を認めていなかった東京大学植物学教室の大窪昭三郎も次第に万太郎の実力を知るようになる。その大窪がヤマトグサの新種発見に喜ぶ姿は印象的だった。大窪役を演じているのが新座市観光親善大使を務める今野浩喜さん。CM「今野、愛はあるんか」でもブレイクしたが、今回のドラマの舞台の一つが大泉ということで、地元としては今野さんの活躍はうれしい。Eテ『偉人の年収How much?』では「偉人」を好演。皆で応援しましょう。



■ぶんか村エッセイ130



吉澤先生と大泉学園町
塩川 誠(NPO法人創作折り紙吉澤章美術館代表理事)

しおかわ まこと1932年東京生まれ。大学卒業後、鎌倉書房入社。雑誌編集部を経て書籍担当に。吉澤章著『折り紙読本T』復刻をはじめ『美しい折り紙』『折り紙読本U』『折り紙博物誌T、U』を刊行。1975年国際折り紙研究会会員加入。退職後2007年非営利活動法人「創作折り紙吉澤章美術館」創設。2019年東久留米に「吉澤章折り紙ギャラリー」を開設、吉澤作品の常設展示に務める。

 「折り紙」の連載原稿を頂きに荻窪にある吉澤先生のお宅へ伺っていたある日、借家であるお宅が建て替えることになったので引っ越さなければならないと知らされました。
「Ogikubo, Japan」と記しただけで、海外から吉澤先生のもとへ手紙が届いたという話を聞いたのもそのころ、吉澤折り紙が日本のみならず、世界から高く評価されていることを感じていました。
 先生はマスコミ関連の仕事が多いこともあり、03の電話番号が使える地域にというご希望を拠りどころに不動産店を回り、チラシを集めました。検討された結果、荻窪からバス連絡がある練馬区大泉学園町が第一候補に。荻窪郵便局に設けていた私書箱が国内・国外郵便物の受入口になっていて毎日のように取りに寄られていたからです。
関越自動車道開通の翌年(1972年)11月関越道路沿いの大泉学園町5丁目の新居へ越すことになりました。車を借りて朝から書類箱に入った大切な作品類を運び始めました。
 途中西武新宿線、池袋線の踏切が二か所、道路信号は目白通りとの交差点のみ。車の数も少なく、仕事は快調。しかし往復の回数は増えても荷物の数が減る気配はありません。部屋数が少なく、平屋の建物のどこから湧き上がってくるのか見当もつきませんでした。
のちに3万点に及ぶことが分かった遺作のうち、晩年の名品が創作された大泉学園町約30年の活躍の場はこうして始まりました。
※吉澤章氏については特集参照



■おでかけ情報


あらかじめ確かめてからお出かけください。
定休日が祝日の場合は翌日休となる等もあります。

●「田中小実昌」―物語を超えた作家−
開催中〜8/13(日)  9:00〜18:00 月曜休館 観覧無料
石神井公園ふるさと文化館 練馬区石神井町5-12-16(石神井公園駅15分) 03-3996-4060

●ちひろ 子ども百景
開催中〜10/1(日)10:00〜17:00月曜休館 1000円 ちひろ美術館 練馬区下石神井4-7-2 (上井草駅7分) 03-3995-0612

●牧野富太郎 草木とともに
開催中〜10/9(月) 9:30〜16:30 火曜休館 入場無料 牧野記念庭園記念館 練馬区東大泉6-34-4(大泉学園駅5分) 03-6904-6403 
※NHK朝ドラ『らんまん』好評放送中

●フォトサークル花とみどり「花の表情展2023」
8/9(水)〜13(日)10:00〜18:00 入場無料 練馬区立美術館区民ギャラリー 練馬区貫井1-36-16(中村橋駅3分) 03-3577-1821 ※03-5372-1136(関口純一)

●フルートの楽しみ 佐々木真とともに
8/14(月) 15:00  入場無料 大泉学園ゆめりあホール(大泉学園駅北口すぐ) 048-477-1313メソン
※第21回フルート研究発表演奏会

●新座市立歴史民俗資料館(れきしてらす)
常設展ギャラリートーク 
8/19(土)10:30 参加無料 定員20名 8月1日9時から電話・窓口受付 新座市立歴史民俗資料館(れきしてらす) 新座市野火止2-9-37 048-481-0177
講師/大東文化大学文学部教授 宮瀧交二
※新座の歴史を基礎から専門分野まで幅広く解説
  
●シネマ de にいざ vol.2映画「銀河鉄道の父」上映会
8/25(金) 10:30 14:00 1000円(当日1100円) 新座市民会館 新座市野火止1-2(新座市役所前バス停4分) 048-481-1111 出演/役所広司 菅田将暉 森七菜

●東京演劇アンサンブルこどもの劇場公演
「宇宙のなかの熊」
8/26(土)・27(日)15:00(27日は11:00・15:00の2回) 3000円(当日3500円) 親子ペアチケット4000円(前売のみ) 野火止RAUM 新座市野火止3-16-24(新座駅送迎有要予約) 048-423-2521

●映画「こんにちは、母さん」
9/1(金)〜  T・ジョイSEIBU大泉ほか 原作/永井愛 監督/山田洋次 出演/吉永小百合 大泉洋 永野芽郁 
※小さな家族に、大きすぎる事件。

●真夏の音楽会vol.6
大谷康子と楽しむ音楽の旅「魔法の世界へ」
9/2(土) 15:30 S3500円 A2500円 東京芸術劇場 豊島区西池袋1-8-1(池袋駅西口) バイオリン/大谷康子 指揮/大友直人 NHK交響楽団 曲目/「ハリー・ポッター」よりヘドウィグのテーマ・ハリーの不思議な世界ほか 03-5984-1284(練馬区文化振興係) 

●命宿るORIGAMI
吉澤章創作折り紙の世界
9/2(土)〜10/22(日) 10:00〜17:00 1100円 木曜休館 佐野美術館 静岡県三島市中田町1-43(JR三島駅から1.3q)055-975-7278 ※スライドレクチャー&折り紙講座「吉澤章創作折り紙の世界」講師/塩川誠(NPO法人創作折り紙吉澤章美術館代表理事) 9/30(土)1400〜 参加費500円 ※エッセイ・特集参照

●歌声喫茶ともしびin大泉学園
9/4(月) 9:50 2000円 要予約 大泉学園ゆめりあホール(大泉学園駅北口) 03-6907-2731(ともしび音楽企画) 
 
●宇川直宏展 
FINAL MEDIA THERAPIST@DOMMUNE
9/10(日)〜11/5(日) 10:00〜18:00 1000円 月曜休館 練馬区立美術館 練馬区貫井1-36-16(中村橋駅3分) 03-3577-1821

●新座市商工会青年部50周年記念イベント
にいざっこナイトフェス
9/23(土) 11:00〜20:00 新座市役所前駐車場 
新座市野火止1-1-1 048-478-0055 ※新座の全小中学や大学生と作り上げた楽しいお祭り。 屋台、ゲーム、ステージイベント、5000個の灯明が彩るまつりなど

●映画「みとりし」上映と講演
9/29(金) 13:30 999円 和光市民文化センターサンアゼリア 和光市広沢1-5(和光市駅13分) 048-468-7771 ※上映後講演あり「誰もが幸せな最期を迎えるために」講師/中屋敷妙子 問合せ048-465-4188(かぎわだ)※特集面参照

●ヨハンシュトラウスU世作曲 オペレッタ「こうもり」
9/30(土)・10/1(日) 14:00 5000円 朝霞市民会館ゆめぱれす 朝霞市本町1-26-1(朝霞駅南口12分) 048-466-2525 ※日本語上演
 
編集後記 新座市池田のダチョウ牧場並木屋が5月末日をもって惜しまれながら閉園した。本紙は開園当初から取材、紹介してきたので名残惜しさは一入だ。特にともに「だちょうのたまごサブレ」の商品開発をしたことなど思い出は尽きない。新座の観光に貢献し、地域の人たちを楽しませてくれたダチョウ牧場さん、ありがとう!

HP
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