■松永伍一を追いかけて



 練馬の上石神井に住んだ詩人松永伍一の貴重な資料や文献を常設展示するコーナーが、この夏群馬県下仁田町にオープンする。尽力した近藤征治さん(新座市野火止)に話を伺った。はプチぶんか村編集長。

近藤征治さん

松永伍一さん



 こんにちは!近藤さんとは松永伍一さんとの縁で長いお付き合いになりましたね。
近藤 はい、私がさくら展にお邪魔して〈大泉学園通りの桜並木を通って松永伍一先生のお宅に通っていた…〉というメールを送ったときからですから
 松永伍一さんが練馬に住んでいることは承知していましたが、アプローチしようと思ったときには亡くなられてしまっていて残念でした。その松永さんと同郷でいらした。
近藤 福岡県三潴(みずま)郡大木町というところで小学校から中学にかけてご指導いただきました。文学よりも絵画のほうでした。中2のとき松永先生が私の絵を全国コンクールに出品し、それで佳作をいただいたんです。全校生の前で褒められたのが今日の画作につながっていると思います。当時先生は無着成恭の「山びこ学校」のような「河童園」を主宰していて、子どもには詩の指導、大人向けには文化サロンのような集まりを開いていました。
 地域文化に貢献されていたんですね。
近藤 先生が上京してからはしばらくお付き合いも途絶えましたが、義兄が先生の幼馴染ということもあって縁は切れずにいました。私も企業勤めで忙しくしていましたから、お付き合いが再開したのはずっと後です。
 近藤さんが新座に居を据えてからは、上石神井は近いですから交流も多かったのでは。
近藤 そうです。よくお訪ねしました。先生は東京でも文化サロンを主宰していて、驚くような有名人が集っていました。縁を大事にする先生は人脈も豊富で、私も家内とともに参加して多くの縁をいただきました。
 ところで遺品の整理や保管を任されたそうですね。
近藤 なぜかこの私がすることになりました。文学関係、絵画、採集した子守唄関係など膨大な資料をどうするかということで、郷里の図書館にコーナーを設けてもらったり、展覧会を開催したり奔走しました。
そして松永先生の子守唄を引き継いだ西舘好子さん(日本子守唄協会理事長)にも相談したわけです。西舘さんは先生の最期に立ち会った方でもありますしね。
 西舘さんといえば下仁田町にシングルマザー支援の「女性村ねぎぼうず」を立ち上げられています。
近藤 下仁田町で廃校になった小学校を拠点に活動なさっています。各教室に魅力ある企画を展開されているので、その一つに松永伍一コーナーも加えてはどうかと提案したところ二つ返事でOKとなり、この夏から一般公開が始まります。
 松永伍一コーナーはどのような内容ですか。
近藤 松永先生の著作、自筆原稿、文学資料、全国取材採集した子守唄関係、絵画60点などを展示します。先生を師と仰いだ詩人国見修二さんの瞽女(ごぜ)関連の展示もあります。
特に7月28日のオープニングには歌手の松原健之さん、瞽女唄の横川恵子さんほかゲストも来場、ぜひ皆さんもご参加ください。ところで、松原さんの芸名には松永先生の「松」と五木寛之さんの「之」がついていて二人の応援の気持ちが込められています。ちなみに先生と五木さんは県立八女高校の同窓で、五木さんが2年後輩です。

準備中から見学者が…


 「ねぎぼうず」にはほかにどのような展示室があるのでしょうか。
近藤 まず、先ごろ亡くなられたフジコ・ヘミングさんのピアノが置かれた「フジコの部屋」。フジコさんは絵も描いた方で、その作品も展示されています。ピアノはドイツ製ですが、ベルリンの製作会社はもう実在しません。フジコさんが直接弾いて励んでいた貴重な一台です。
 西舘さんとフジコさんの親交のたまものですね。
近藤 事前に申し込めばだれでも弾かせてもらえると聞いています。ほかには「大野隆司の版画だらけ猫だらけの部屋」も魅力です。
 大野さんの猫ちゃんはとってもユーモラスでかわいいですね。ダジャレも楽しい。
近藤 地元の方々の自然を題材にした展示や古い宿場の紹介絵画も飾られています。驚いたのは、牧野富太郎博士の自筆の手紙が展示されていたこと。朝ドラ「らんまん」で博士は有名になりましたが、西牧で牧野博士の手紙に出会うとは驚きました。これも縁ですかね。実は寄贈した私の油絵50〜100号の16点が廊下や教室に飾られているんです。それも見ていただけたらうれしいですね。
 近藤さんは新座美術協会に所属していらっしゃいます。新座で展覧会がありますね。
近藤 はい。下仁田は遠いように思われるかもしれませんが、新幹線で高崎へ。上信電鉄に乗り換えると終点が下仁田です。そこから「ねぎぼうず」までタクシーで20分。温泉旅館もあり宿場のなごりをとどめていますし、近くには世界遺産の荒船風穴もある。車なら関越自動車道で藤岡インターから軽井沢方面へ。軽井沢へ行く途中ですから立ち寄りやすいですね。
 松永伍一さんを追いかけていくと素敵なことにたくさん出会えそうです。ありがとうございました。
※おでかけ情報参照

懐かしの「ポラン書房」の看板
大泉学園北口のポラン書房がコロナ禍で閉店したときは涙が出そうでした。メルヘンチックな店の看板がどんなに街を楽しくさせてくれていたことか。その看板を作ったのが本号エッセイの加藤宏幸さん。ポランとは宮沢賢治の幻想豊かな童話「ポランの広場」からつけた名前。だから看板は賢治ワールドをイメージして製作したとか。ヤマネコがいたり銀河鉄道の線路があったり、また顔のある太陽や月も描かれていますね。耳をすませば「ポランの広場の歌」が聞こえてくるようです。



チロルの森 さいとうしずえ手づくり絵本展
 池袋コミカレで本格的な文学・絵画・製本技術を学び、卒業制作で絵本「ママどこいった?」を完成させた。それがきっかけで絵本講座の講師などを務めてきたさいとうしずえさん(90歳)の集大成ともいえる展覧会。手がけた絵本は出版作を含め68冊。そのうち厳選した19点が並ぶ。「崩れたり変色している作品、物語に力を入れた作品、力が抜けて却ってよい作品」といろいろ。NHKラジオ深夜便に出演したことで知り合った新座の女性に勧められて今回の絵本展に?がった。「幼児教育の職場体験もプラスに働いています。言いたいことは絵本の中に込めたつもり」。作家在廊時にぜひ鑑賞を。詳細はおでかけ情報欄参照


七夕のお菓子「さくべい」
さくべいは「索餅」。中国伝来の唐菓子の1つで、平安貴族が七夕に食べていたという揚げ菓子。小麦粉と米粉を練り、縄のように細長くねじって作る。
京都清水地主神社のレシピを参考に編集部が作ったのが下の写真。〔材料(2人分)〕小麦粉125g、牛乳25cc、卵1個、砂糖20g、油大さじ1/2〔作り方〕小麦粉・砂糖を混ぜ入れたボールに割りほぐした卵と牛乳を加えてこね、油を足してなめらかになるまでこねあげる。まとめてラップにくるみ冷蔵庫で30分寝かす。打ち粉して15pにのばして切る。
転がし丸めながら縄状にしてねじねじに形成。
油できつね色に揚げてできあがり!


【推しです】 中国酒家 蘭亭(らんてい)
「担々麺」〜投稿(空飛ぶ子ぶた)〜

うまい担々麺を食べたくなったとき、体が「麻」の味を求めているとき、ネギと相性抜群のピータンや肉汁あふれる水餃子に出会いたいとき、そんな時は迷わず蘭亭へと足を運ぶべし。もちろんランチは今日一日の活力を充足してくれる。極めつけは都心に行かずして地元大泉で本格的なベルギービールコレクションを堪能できること。これぞ蘭亭、まさしく蘭亭、気配り上手なご夫婦のおもてなしで女性一人でもゆっくりできます。是非! 
新座市栄4-5-1 070-7511-9227 不定休
11:30〜14:00 18:00〜21:00 ↓担々麺880円



■ぶんか村エッセイ135



村おこしと耐震診断と
加藤宏幸(概KA holdings 加藤建築設計事務所代表取締役)

かとう ひろゆき 1970年練馬区生まれ。建築事務所代表取締役ほか練馬区建築設計事務所協会代表理事。建築と工業デザインを学び、主に木造の建築設計を行っている。旅が好きで、国内は47都道府県全て踏破。初めての海外旅行は高2の時、悪友と2人でのエジプト旅行。20歳でシベリア鉄道にてヨーロッパを目指す。


 プチぶんか村の編集長とは、ポラン書房が大泉学園町から大泉学園駅北口に移転する際に、店舗設計させて頂いた頃からのお付き合いになります。宮沢賢治には詳しいわけではありませんが、ポランさんを設計するにあたり作品に一通り目を通し、勢い余って看板の製作までしてしまいました。
 現在はヘリテージマネジャーの資格を生かし、民家の再生・自治体との村おこしなどにも係わっています。ご縁もあり山梨県南巨摩郡富士川町十谷に明治の民家を所有することになり、今年からは宿泊施設「出口屋」として運用を開始します。民家の用途変更に当たっては、薪ストーブの導入などもあり、泣いちゃうくらい消防署の指導を受けました。どうにか検査も合格し、証書を受け取るときは労いの言葉も頂きました。今回期せずして異なった生活圏で、文化の形成や街づくりに尽力されている、多くの方と知り合う機会を得ました。この機会を生かして次のチャレンジに繋がってゆければと思います。
 また、練馬区では今年から耐震工事の助成制度が大幅に拡充されています。1月1日に起きた能登半島の地震のこともあり、無料で実施している簡易診断についても、申し込まれる方がとても増えています。中越地震や東日本大震災の頃からボランティアで現場のお手伝いをさせていただきました。その際に倒壊した建物を延べ数百棟は観てきたと思います。自分の建物の耐震性能を知っておくことはとても大事ですので、是非無料の診断に申し込まれてみてください。
 ※特集面に関連記事あり
 



■おでかけ情報


あらかじめ確かめてからお出かけください。
定休日が祝日の場合は翌日休となる等もあります。

●MAKINO植物の肖像
   菅原一剛が写した牧野富太郎の標本
開催中〜6/30(日) 9:30〜16:30 火曜休園 入場無料 牧野記念庭園 練馬区東大泉6-34-4(大泉学園駅南口5分) 03-6904-6403

●第10回企画展「水辺の記憶」
水面に画家は何を見たか?
開催中〜7/27(土) 毎週土曜日11:00〜17:00 
300円 永井潔アトリエ館 練馬区早宮4-6-5
https://www.nagaikiyoshi-atelier.com/

●第22回新座美術協会展
6/3(月)〜9(日) 10:00(初日13:00)〜17:00(最終16:00) 入場無料 新座市民ギャラリー(新座市役所第二庁舎1階) 090-8700-4823(丸田) 
※絵画・版画・写真・彫刻・インスタレーション・陶芸

★チロルの森 さいとうしずえ手づくり絵本展
6/4(火)〜7/25(木) 9:00〜17:00 土・日・祝休 チロルの森ギャラリー(新座市立第四小学校内) 新座市馬場3-6-1 新座栄バス停から5分 
※問合せ090-2762-1442(斎藤) 090-4528-3856(沖山) 
※作家在廊日/毎週火曜と6/13(木) 27(木) 7/11(木) 25(木) 10:20〜13:00
 
●沖縄民謡演奏会
6/9(日) 14:00入場無料 リーシェガーデン大泉学園1階ホール 練馬区大泉学園町7-10-21(大泉双葉幼稚園跡地) 03-6904-5530
※出演/沖縄民謡の会 三線演奏・歌など ※ご近所様歓迎!

●映画『ディア・ファミリー』
6/14(金)〜 T・ジョイSEIBU大泉ほか 出演/大泉洋
菅野美穂 福本莉子 川栄李奈  
※カテーテル誕生に隠された奇跡の実話

●窮の会2024作品展
6/16(日)〜22(土) 11:00(初日13:00)〜17:00(最
終日15:00) 有楽町東京交通会館B1エメラルドルーム  有楽町2-10-1 03-3214-4288 ※ 伊澤正男(さいたま市)・永原リタ(西東京市)出展

●歌声喫茶ともしびin大泉学園
6/18(火)・7/16(火) 14:00 2000円(要予約03-6907-2731ともしび音楽企画) 大泉学園ゆめりあホール(大泉学園駅北口すぐ) 03-5947-2351

●水越響 シルバークラフトジュエリー
6/20(木)〜25(火) 11:00〜18:00(最終日17:00)
ギャラリー・スペースM 志木市本町1-2-2
048-474-8486 ※使い易さと遊び心を大切に制作

●いわさきちひろ ぼつご50ねん こどものみなさまへあ・そ・ぼ
6/22(土)〜10/6(日) 10:00〜17:00 1200円 月曜休館 ちひろ美術館・東京 練馬区下石神井4-7-2(上井草駅7分) 03-3995-0612

●新座市合唱連盟40周年記念コンサート
〜合唱の喜びはここに〜

6/23(日) 13:00 入場無料 新座市民会館 新座市野火止1-1-2 
048-481-1111 ※出演/13団体と招待演奏

●歌劇団テオ・ドーロ第3回公演 
G.ドニゼッティ「愛の妙薬」全2幕 字幕付きイタリア語上演
7/6(土)18:00・7(日)14:00 2800円 和光市民文化センターサンアゼリア 
048-468-7771
080-7642-5352(大坪)

●練馬交響楽団 第79回定期演奏会
7/14(日) 14:00 1000円 練馬文化センター(練馬駅北口すぐ) 
03-3948-9000 ※指揮/松尾葉子 曲目/ベルリオーズ序曲「ローマの謝肉祭」 ムソルグスキー「展覧会の絵」 ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」

●第16回Musik Waldコンサート
ヴァイオリン・フルート・ピアノの素敵なマリアージュ
〜ウィーンの至宝 ヴォルフガング・ダヴィット氏を迎えて

7/21(日) 13:30 2000円(当日2500円) 
新座市民会館 新座市野火止1-1-2 
048-481-1111 080-4298-9246(大竹) 

★ファミリーコンサートin高崎市
スミセイキッズフォーラム
〜親子の絆の子守唄〜(特集関連)

7/27(土) 13:30入場無料(要申込) 高崎市文化会館 高崎市末広町23-1 出演/西舘好子 松原健之 じゅじゅ
問合せ03-6458-0283 NPO法人日本子守唄協会

★松永伍一コーナーオープン記念イベント(特集関連)
7/28(日)午前 女性村ねぎぼうず(下仁田町大字西牧461-1下仁田旧西牧小学校内) ※出演/松原健之、瞽女唄横川恵子、西舘好子ほか 
※一般参加歓迎! 
問合せ03-6458-0283 090-4541-4343(近藤)

●平田晃久−人間の波打ちぎわ
7/28(日)〜9/23(月祝)10:00〜18:00 1000円 月曜休館 練馬区立美術館 練馬区貫井1-36-16(中村橋駅3分) 03-3577-1821
※建築家平田晃久の建築世界を紹介する展覧会


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