あの国木田独歩が婦人画報の創刊者とは。婦人画報は今日まで脈々と続いていますね。
独歩と聞いて『武蔵野』を連想する人は多いでしょう。プチぶんか村エリアでは武蔵野っぽい雑木林を見かけます。そこでこのあたりの武蔵野について考えてみたいと思います。
国木田独歩
明治4年(1871)、千葉県銚子に生まれる。裁判所勤めの父親の転勤により幼少期を広島、山口、岩国で過ごす。山紫水明の地で育んだ感性は、長じてイギリスの詩人ワーズワースの影響を受けることにつながり、「詩人が天職」と悟る。18歳で東京専門学校(現早稲田大学)英語普通科に入学、21歳で中退。『武蔵野』は28歳のときに発表し、31歳で処女出版。婦人画報を創刊したのは『武蔵野』発表から7年後である。明治41年(1908)肺患により茅ヶ崎にて没。享年36。
代表作に「武蔵野」のほか「忘れえぬ人々」「牛肉と馬鈴薯」など。(下段囲みに関連記事)
独歩がいる街
新座市中央図書館前に「木々と語る日」と題する国木田独歩像がある。この像は、新座市市制施行20周年を祝う篤志家が、市内在住の彫刻家峯田義郎氏(エッセイ#117)に制作を依頼し、1990年に市に寄贈したもの。なかなか端正な顔立ちである。
新座市のマスコットは雑木林をもじった「ゾウキリン」。ゾウキリンの街に独歩像があるというのには意味がありそうだ。「武蔵野の風景がいかに変貌しようとも、国木田独歩の『武蔵野』は不滅だ」という人もいるように、雑木林が少なくなっても「武蔵野」のイメージはこの地に定着している。
ところで来年は婦人画報の創刊から120年。そんな折、この地に独歩像があるよ、と自慢できるのはうれしいことだ。
もう一つ誇れる武蔵野
合唱組曲「武蔵野の子ども」
「ここは武蔵野平林寺」「おじいさんどこへ行くの」「月と木枯し」「武蔵野の子ども」の4曲から構成される新座少年少女合唱団初演のオリジナル合唱バラード。「武蔵野」「野火止用水」「雑木林」「平林寺」「植木市」「座禅の肩」「喝!」「禅の修行の道場」「ぐわあ〜ん」「ごお〜ん」「ぼくたちはけやき」「緑は土の声だから」…など、地元の人なら思い当たる武蔵野のキーワードが全曲にちりばめられている。一度は聴いておきたい楽曲だ。CDは新座市の図書館で。作曲/岩河三郎 作詞/中村千栄子
校歌にも「武蔵野」
練馬区立の小中学校103校中34校、新座市立の小中学校24校のうち19校の校歌に「武蔵野」が歌われている(1991年調べ)。やはりこの地のイメージは「武蔵野」なのか。校歌の一例を挙げておこう。
◇ここは武蔵野のどかな大地
◇富士山望む武蔵野に
◇開けゆく光むさしのの
◇すすきのなびく武蔵野に
◇仰ぎみる武蔵野の空
武蔵野のようでもある
小説家の藤沢周平さんは、大泉学園町に住み、この地で多くの作品を残した。氏の散歩コースとしてよく知られる大泉公園は、半分が広場、半分が雑木林となっている。周平さんは、ベンチに座って子どもたちが遊ぶのを眺め、またある時は独歩のように「林の奥に座して四顧し、傾聴し、睇視し、黙想」していたかもしれない。
秋の黄葉の候を迎えると、大泉公園は武蔵野というよりはパリのリュクサンブール公園のような趣となる。
大泉公園 |
武蔵野で食べる
かつて保谷に「保谷武蔵野」という北京料理店があった。昭和の古い和風建築と北京料理はそのミスマッチが好まれて訪れる人も多かった。立派な庭園に降りて食後に記念撮影する人もいた。
保谷に住んだ詩人茨木のり子さんも保谷武蔵野を訪れた一人。「ほうや草紙―獏さんに―」の中にこの店が登場する。
獏さんの娘のミミコさんと二人で食事をする。「くらげを注文したら洋皿山盛一杯こんもりと これを二人で食えというや」「しゅうまいを食べ 鳥料理もたいらげ…」と具体的な食べ物が描かれている。
武蔵野に散歩する人は
「道に迷ふことを苦にしてはならない。どの路でも足の向く方へゆけば必ず其処に見るべく、聞くべく、感ずべく獲物がある。…中略…ただ、此路
をぶらぶら歩て思ひつき次第に右し左すれば随処に吾等を満足さするものがある。これが實に又た、武蔵野第一の特色だらうと自分はしみじみ感じて居る」『武蔵野』より
独歩の時代は迷うほどの広大な雑木林があったのだ。できることなら私たちもどこかの林に分け入って迷ってみたいものである。
南沢湧水群(東久留米市) |
日本ラーメン科学研究所
バスから見えた大泉学園通りの「ラーメン科学研究所」という看板につられて降りてみると、そこは冷凍即席麺の無人販売所(餃子の「雪松」と同所)。箱入り2食1000円を、モノは試しと購入。麺、スープ、チャーシュー、メンマ、刻みネギ…とラーメンに必要な材料がすべて揃っているので値段的にも納得。「醤油の黄金比」という醤油ラーメンを作る。沸騰させたスープに冷凍麺を入れて煮込み、戻しておいたトッピングをのせると簡単に出来上がる。濃厚スープに絡んだ?は科学的分析のせいかとてもおいしい。大泉郵便局そば。大泉学園のほか富士見台駅、光が丘などでも販売。
「婦人画報」創刊号
婦人画報創刊号を復刻版で覗いてみた。編集長/国木田哲夫(独歩) 近事画報社刊。表紙に「明治38年7月1日発行 毎月1回 第一巻第一号」とある。髪をリボンで束ねた意志の強さを感じさせる女性が描かれている。女性向け広告が数ページ。なんとこの時代から博報堂が担当している。前半は画報(写真のページ)で、当時としては斬新な内外の女性の活動を広く紹介している。後半は発行の辞に続き大隈重信の「婦人画報の発刊に就て」、日本女子大学校長成瀬仁蔵の「女子教育の方針」、羽仁もと子の「育児雑感」などが掲載されている。文学のコーナーもある。なぜ女性誌を発行するかについては「征露の役起りて以来は我國婦人の活動殊に目覺ましく(中略)この雑誌はこの時勢に促されて生まれたるなり」とある。
【推しです】 Kitchenまんま屋のお稲荷さん
〜大泉学園町のマーガレットさんより〜
まんま屋さんは、うおがし銘茶を置いているのでよく利用しています。油その他の調味料がよいせいかお弁当屋やお惣菜の後味が嫌でないのです。田代酒店の息子さんで、キッコーマンにお勤めだったと聞いたような…。奥さんは美人さん、旦那さんは話しやすい感じ。お年寄りのひとりぐらしのファンも多く長く続いていますね。お稲荷さんが市販の味でなく家庭で作った味なので重宝しています。
条件が合えば宅配もしてもらえます。私はあくまでもお稲荷さんのファンなのです。
大泉学園町6-18-43(大泉風致地区バス停そば)
日曜定休・祝日不定休
03-3923-1654
『間取りの正解』
暮らしの夢が広がる本。プチぶんか村エッセイ#125の水越美枝子さん(東大泉在住・一級建築士事務所アトリエサラ主宰)の近著。新築やリフォームをしようとするとき、ずっと快適に暮らせる間取りを考えたい。それにはスペシャリストのアドバイスは欠かせない。コロナ以降、ライフスタイルも変化した。これからの時代に即して、"設計した住宅は全国300棟"という経験に基づく助言はありがたい。制作、編集、カメラ、図面など女性パワーが結集した書でもある。潟Gクスナレッジ刊
1800円+税
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