■蕎麦喰地蔵尊



 年越しそばの季節です。蕎麦好きはたくさんいますね。好きが高じて定年後にそば打ち名人を目指す方もいるでしょう。そんなそば好きに朗報。練馬に全国的にも珍しい「蕎麦喰地蔵尊」がおわします。お参りすれば何らかのご利益が得られそう。年末年始にお参りに行くというのはいかがでしょう。

蕎麦喰地蔵伝説
 ある年の秋のこと、浅草広小路にある「尾張屋」という蕎麦屋に、一人のお坊さんが、同じ時間にやって来るようになった。お坊さんは食べ終わると、毎回合掌をして丁寧にお礼を言って出て行く。それが毎日のように続いた。
 亭主は、「あの奥ゆかしい容貌、穏やかな物腰はただのお坊さんではあるまい。いったいどちらのお寺の和尚さんだろう」と思い、ある日お坊さんの後をつけていった。お坊さんは、店からほど近い誓願寺の総門を通って二棟目にある塔頭の西慶院の地蔵堂の前で、すっと消えてしまった。亭主は不思議に思って店に帰る。その夜、亭主の夢枕にお坊さんが立って、「私は西慶院の地蔵である。日頃お前から受けた蕎麦の供養に報いて、一家の人々を悪疫から守ってあげよう」そう言って姿を消した。それ以来、蕎麦屋の亭主は、西慶院の地蔵尊に蕎麦を供えて供養した。
 その後、天保8年(1837)4月、全国に疫病が流行した中で、尾張屋の一家だけは疫病にかからず無事だったという。
 このことがあってから、西慶院の地蔵尊の話が江戸市中に広がって、「蕎麦喰地蔵尊」として人々の信仰を集めるようになった。


蕎麦喰地蔵尊

練馬の十一ヶ寺
 この西慶院は、同じ塔頭の九品(くほん)院と合併して、お地蔵様も九品院に移された。
その後、誓願寺の塔頭群は練馬に移転し、十一ヶ寺として今にいたる。現在そのお地蔵様を安置しているのが、この十一ヶ寺の一つ、九品院である。

 西武線豊島園駅の改札右手商店街の細道を1分ほど歩くと、大きな通り(豊島園通り)に出て、お寺の塀が見えてくる。それが十一ヶ寺の入口だ。九品院は最奥左手にある。
ところで十一ヶ寺とは、「快楽(けらく)院、宗周(そうしゅ)院、仮宿(けしゅく)院、受用院、称名院、仁寿(にんじゅ)院、迎接(こうじょう)院、本性院、得生院、九品院、林宗院」の11の寺の総称である。


もとは小田原で発見
 実はこのお地蔵さまは、もとは小田原で発見されたもの。
家康が、各地から寺を江戸に集めた際、小田原の誓願寺もその一つだった。移転の際、近くの地中から見つかったのがこのお地蔵様。五尺(約150p)ほどだったという。それが江戸に運ばれて、前述の伝説と相まっていつしか「蕎麦喰地蔵」と呼ばれるようになった。
 十一ヶ寺は神田から幾多の曲折を経て浅草へと転々とし、大正12年(1923)の関東大震災で被災。その後は、浅草から練馬の現在地に移転した。

九品院でのお参りは
蕎麦喰地蔵は正式には「延命蕎麦喰地蔵尊」という。紅葉して美しい山門をくぐると、右手高台に赤い旗がはためいているので、5段ほどの階段を上って参拝しよう。
小さなお堂に蕎麦喰地蔵尊が安置されている。長い年月で五尺あった丈は短くなりお顔も風化されてはっきりしないが、信仰されてきた風格を感じる。像の前には蕎麦のオブジェがしつらえてあり、また蕎麦のお供えも積んである。やはりお蕎麦屋さんや蕎麦好きな人の信仰が絶えないのだろう。

 地蔵尊のすぐそばで蕎麦談義をしているのは羅漢さん。楽しそうに蕎麦を食べている。
かつては参詣者に打ちたて蕎麦をふるまう行事もあったそうだが、本堂新築で途絶えている。ご住職の話では数年後には参詣者に蕎麦を楽しんでもらえる企画を検討中だそうだ。

ご利益はコレ!
「延命」とついているので長寿をお願いしよう。ただし「長生きできますように」だけではなく「長生きできるように努力しますので見守ってください」とお願いしたい。疫病退散はいまでいうとコロナだろうか。「マスクをして、うがい手洗いもしますので、コロナにかからないように…」と願うのもよい。
 このほか、九品院は菓子御用達井上家の宿坊となっていたことから、お菓子関係の方が参拝すればご利益があるかも。
地蔵尊のお参りを終えたら本堂前でガラス越しに御本尊阿弥陀様にも手を合わせよう。
六朝慈母観音もお祀りしているから、母の慈愛を得られるように願うのもいいだろう。
山号 田嶋山
開山 本蓮社正誉上人秀覚大和尚
開基 塙直安道閑入道(※直安は晩年江戸に住んで小児科医になった。)
宗派 浄土宗
開門 9時〜17時 開門時は境内自由


九品院の藤木ご住職さま


ちばてつやさん、文化勲章受章
 漫画界では初めての受章、おめでとうございます。
練馬の名誉区民でもあるちばてつやさんの「練馬愛」は相当なもの。かつてプチぶんか村に書いてくださったぶんか村エッセイ#40(2006年10月号)を読んでいただければわかります。ちばさんといえば「あしたのジョー」や「のたり松太郎」は有名だが、一方で「ママのバイオリン」「ユカをよぶ海」などの少女漫画を愛読して育った70世代の女性ファンも多い。ある人は「漫画から学んだことが多々あった」「復刻版を大事にしている」という。「子どもの読み物」とか「悪書」と
酷評された時代のあった漫画が「文化」として認められたことを、故・手塚治虫氏はじめ漫画に携わってきた多くの人たちと喜び合いたくなる。
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谷川俊太郎×鉄腕アトム×高井達雄
 詩人の谷川俊太郎氏が亡くなられた。新座市民にとっては谷川氏がテレビアニメ「鉄腕アトム」の主題歌を作詞したことで追悼の気持ちがより強まっている。なにせアトムの住民票は新座市となっているのだから(写真下)。JR武蔵野線新座駅の鉄腕アトムの駅メロは、手塚プロのスタジオが新座市域にあることから上下線とも「鉄腕アトム」の曲が流れる。作詞は谷川氏だが、この駅メロを作曲したのは練馬区在住の高井達雄氏。高井氏には2019年12月号にエッセイを寄せていただいた。そこには鉄腕アトムの歌が生まれた経緯が語られている。曲が先で歌詞は後付けだった。
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山峡の星降る夜、一棟貸切「出口や」
 ぶんか村エッセイ#135に登場した加藤建築事務所の加藤宏幸さんからのメッセージ。「明治38年、日露戦争が終結した年に建てられたこの建物は、時の流れと人々の暮らしを静かに見守ってきました。畳に座り、窓の外の風景を眺めると、まるでタイムスリップしたかのような感覚に。和室の温もり、古い柱の年輪、そして静かに光を透過する障子。五感で感じる歴史の重みは、一人ひとりの物語を紡ぎ出すでしょう。中庭では、季節の移ろいを告げる植物が静かに息づいています。冬には薪ストーブを囲み、地元の食材を使った食事を楽しむのもおすすめです。この家で過ごす時間は、きっと忘れられない思い出となるはずです。この建物は、単なる宿泊施設ではありません。地域の歴史と文化を体験できる場所です。ご利用いただくことで、この貴重な建物を後世に残していくことが、私たちの願いです」。
※「出口や」と「山梨」とで検索して詳細確認を!

【推しデス】
カレーの店 天竺(てんじく)食堂
〜新座市のギンセイさんより〜

 普通の住宅地にあります。建物も目立ちません。小さなお店です。しかしここには"本格"があります。天竺さんを推すのは本物に出会えるからです。カレーの店ですからいろんなカレーがあります。変ったカレー?珍しいカレー?いや天竺さんのは本物のカレーです。店長ご夫妻はとてもオープンマインドで、メニューにはありませんが会話も楽しめます。BGMは33回転のLPレコードを流しているとか。本物志向の方々、外せませんよ。 
新座市栄1-12-14
バス停「新座栄」から1分
070-9114-0896
ランチ 11:00〜15:00
ディナー18:00〜21:00 
月火曜定休 テイクアウト・デリバリー有



■ぶんか村エッセイ138



合唱活動と地域の文化
小川明夫(元埼玉フィルハーモニー合唱団代表)



おがわ あきお 1934年埼玉県吉見町生まれ。国立埼玉大学教育学部卒。教員を35年務める傍らNHKの学校放送音楽企画等に携わる。元オペラ彩、朝霞市混声合唱団、三芳町混声合唱団「響」、埼玉フィルハーモニー合唱団等に所属。現在は和光市民合唱団、新座市合唱連盟会員

 人間が2人集まれば、合唱することができます。これが合奏だとうまくいきません。保育園・幼稚園で声を合わせて歌ったことがあるかと思います。これが合唱の始まりです。
 日本には合唱を得意とする合唱団のある県がいくつかあります。埼玉県はその得意な県のひとつです。中学代表、高校代表、職場の合唱団、市民合唱団、おかあさんコーラス等です。新聞紙上にコンクールの結果が掲載され埼玉県の名前が必ず出ています。
 この写真入り記事を見る度に埼玉県の合唱文化のすばらしさに感激しています。
初めて心して合唱を聴いたのはウイーン少年合唱団でした。この世のものとは思えない素晴らしい歌声を聴き、ここでもあちらの文化に驚きました。
私は幼い頃から歌が好きで、高校、大学、職場時代ずっと歌い続けてきました。定年退職後はどっぷりと合唱、オペラ、ミュージカルにはまりこみました。
 私の住む新座市は周囲に和光市、朝霞市、志木市にかこまれ、文化の香りのする地域で沢山の有名な合唱指導者、歌手等の多い環境に恵まれています。これらの先生方にうまく載せられ、また興味のあるものには自ら進んでテストを受けて歌わせていただきました。晩年20年間は混声合唱の団長に推されて楽しい文化の薫り高い合唱活動を十分に経験させていただきました。



■おでかけ情報



あらかじめ確かめてからお出かけください。
定休日が祝日の場合は翌日休となる等もあります。

●朝倉文夫没後60年特別展
ワンダフル猫ライフ 朝倉文夫と猫、ときどき犬

開催中〜12/24(火) 9:30〜16:30 500円  月・木曜休館 朝倉彫塑館 台東区谷中7-18-10(日暮里駅5分) 03-3821-4549

●追悼 野見山暁治 野っ原との契約
開催中〜12/25(水)10:00〜18:00 500円 月曜休館

練馬区立美術館 練馬区貫井1-36-16(中村橋駅3分) 03-3577-1821 ※長く練馬区内にアトリエを構え、2023年にこの世を去った洋画家

●企画展「植物たちの声を聴く-岩谷雪子の世界-」
開催中〜1/ 22(水) 9:30〜16:30入場無料 火曜休園 牧野記念庭園記念館企画展示室 練馬区東大泉6-34-4(大泉学園駅南口5分) 03-6904-6403 ※博士ゆかりの植物をアートとして再構成した作品の数々

●いわさきちひろ ぼつご50ねん こどものみなさまへ
みんな なかまよ

開催中〜1/31(金) 10:00〜17:00 1200円 月曜休館 ちひろ美術館・東京 練馬区下石神井4-7-2(上井草駅7分) 03-3995-0612

●四季の香ローズガーデン ガーデンイルミネーション
12/1(日)〜25(水) 点灯/平日16:00〜17:00 土日16:00〜19:00 入園無料 火曜休園 四季の香ローズガーデン 練馬区光が丘5-2-6(光が丘駅6分) 03-6904-2061 ※雪の結晶や森の動物たちがモチーフのイルミネーション

●歌声喫茶ともしびin大泉学園
12/3(火) 2500円・1/21(火) 2000円 14:00 (要予約03-6907-2731ともしび音楽企画) 大泉学園ゆめりあホール 大泉学園駅北口1分) 03-5947-2351 

●オペレッタ「こうもり」
12/7(土)・8(日)14:00  S11000A9000 B8000
C6000 円 和光市民文化センターサンアゼリア 和光
市広沢1-5(和光市駅13分) 048-468-7771 
オペラ彩事務局048-201-3121 
※全3幕 字幕付ドイツ語 台詞日本語上演

●映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂(ぜにてんどう)』

12/13(日)〜 T・ジョイSEIBU大泉ほか 主演/天海祐希 ※世にも不思議な駄菓子屋で売るのは、どんな願いも叶える駄菓子。それは幸せを呼ぶのか、はたまた不幸を招くのか…

●しめ縄作り
12/15(日) @10:00A13:00・21日(土)10:00 参加費1500円 プライベートガーデン『妙-TAE-』練馬区南大泉5-6-39 050-6872-9709

●新座ウインドオーケストラモッソ第9回定期演奏会12/15(日) 14:00 入場無料 新座市民会館 新座市野火止1-1-2 048-481-1111 曲目/マーチ「プロヴァンスの風」「オリエント急行」「銀河鉄道999」ほか

●映画『グランメゾン・パリ』
12/30 (月) 〜 T・ジョイSEIBU大泉ほか 出演/木村拓哉 鈴木京香 オク・テギョン ※世界に、挑め―

●劇映画『孤独のグルメ』
1/10(金) 〜 T・ジョイSEIBU大泉ほか 監督・脚本・主演/松重豊 出演/内田有紀 磯村勇斗 杏 オダギリジョー 塩見三省 村田雄浩
 
●おーけすとら・ぴとれ座
New Year Concert2025
1/11(土) 13:30 2500円(当日3000円) 朝霞市民会館ゆめぱれす 朝霞市本町1-26-1(朝霞駅12分)
048-466-2525 曲目/「こうもり序曲」「ベートーヴェン交響曲第8番」「美しく青きドナウ」ほか

●Atelier Jeux 1st concert 三ッ石潤司個展
第2回 〜アンサンブル作品を中心に〜
1/28(火) 18:30 4000円 大泉学園ゆめりあホール 練馬区東大泉1-29-1(大泉学園駅北口1分) 03-5947-2351 曲目/「Enfance finie」「夢みたものは…」「眠りの誘い」「子守唄よ」ほか

●映画『銀河鉄道の父』
1/28(火) @10:00A14:00 1000円 和光市民センターサンアゼリア 和光市広沢1-5(和光市駅13分) 048-468-7771 出演/役所広司 菅田将暉 森七菜

●人形劇『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂(ぜにてんどう』
2/8(土) 14:00 2000円 新座市民会館 新座市
野火止1-1-2 048-481-1111 ※幸運なお客様だ
けがたどりつける駄菓子屋『銭天堂』。あなたもたどりつけるとようござんすね

●シベリウス(ヴァイオリン協奏曲)
×チャイコフスキー(交響曲第5番)
2/8(土) 15:00 S3800円A3000円B2500円
練馬文化センター 練馬区練馬1-17-37(練馬駅1分)
03-3993-3311


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