緑の森の彼方から聞こえてくるのはコトコトコットン、水車の回る音。昔この地域でもあたり前のように回っていた水車ですが、現役で活躍する水車はすっかり姿を消しました。それでも私たちの心の中には懐かしい風景としての水車が存在しています。
武蔵野と水車
水が不足していた武蔵野台地には松平信綱が玉川上水から分水した野火止用水があり、小平霊園内のさいかち窪を水源とし朝霞市で新河岸川に合流する全長約17qの黒目川がある。また練馬には石神井川、白子川、中新井川、千川上水、田柄用水の5川があり、うち後者2つは人工河川。地形はきわめて平坦。このように条件のよくない地域にも動力としての水車が必要だった。
幕末になると武蔵野一帯に水車組合が設立され、明治から大正にかけては多くの水車が作られた。水車を動力として使おうとする機運が高まったとはいえ水車建設には流域の理解や維持管理に神経を使い、何より資本のいることで、名主や富農でなければとても設置、運営できないことであった。
水車のかたち
水車には「上掛け式」、「胸掛け式」、「下掛け式」があり(左図)、新座で多く見られたのは胸掛け式。黒目川と野火止用水の豊富な水量を利用した水車は34基もあったらしい。ほかにはイモ洗い用の小さい水車も見受けられたという。
一方練馬に設けられた約20基の水車はすべて下掛け式で、落差のない平坦な地形ではそれも無理からぬことであった。
水車のはたらき
武蔵野一帯では主に精米、精麦を行っていた。「水車で挽くようになるまでは、ひきわりといって手で砕いた麦を食べていた。粉になった小麦を初めて食べた時の感動は忘れられない」との古老の話が残る。小麦・大麦などの製粉は都心に運ばれ売られた。武蔵野の「地粉」は腰が強くめん類に適していた。当地にうどん文化をもたらしたのは水車なのかもしれない。孤独のグルメで紹介されたうどん店もあるほどだ。「端午の節句には柏餅の材料として上新粉がよく売れた」そうだ。
なお、黒目川(朝霞市膝折あたり)の水車では伸銅が盛んに
行われ、それが後々朝霞の地場産業となっていく。
水車を見に行くなら
@ 朝霞市博物館
館入口手前屋外に大きな水車が設えてある。一方、館内にはジオラマ模型により水車を動力としていた頃の伸銅の流れを展示。朝霞の水車の歴史が学べる。月休
朝霞市岡2-7-22
048-469-2285
A 板橋区立水車公園
水車小屋と水田を再現した公園。上掛け式の水車が回り、古きよき時代を偲ばせている。水車小屋の内部も見学できる。
散策に適した日本庭園や茶室もある。
板橋区四葉1-17-2
03-3930-4952
B調布市深大寺水車館
明治末期この地に地元民が資金を出し合って建てた水車小屋があった。最後まで残っていたこの水車の復活を願う運動が起こり、30年ほど前に展示回廊と水車小屋がオープン。
深大寺元町5-10-6 月休
042-482-7636
C恩多野火止水車苑
天明の頃から1951年まで直径7・5m、幅0・9mの水車が稼働。上流で堰を止め、回し堀で導水し水車を回し、精米、精麦を行った。本来は胸掛け水車だが、現在あるのは上掛け水車。つまり再現ではなく、水車のある公園として親しまれている。
東村山市恩多町3-32-17
042-393-5111
D大沢の里水車経営農家・新車(しんぐるま)
日本有数の水車。江戸時代から160年間回り続け、現在も良好な状態で保存されている。「武蔵野(野川流域)の水車経営農家」として都の有形民俗文化財指定、「旧峰岸水車場」として日本機械学会から機械遺産に認定された。ボランティアに支えられてきた水車である。入館200円 火休
三鷹市大沢6-10-15
0422-29-9862
EJR新座駅前(冒頭写真)
駅から見た水車の風景。
F水車の風景が作品に
クロスステッチで水車小屋と上掛け水車を作品にした新座市の菅原勝子さん。菅原さんは道の会のメンバーで、作品は6月から約3か月国立埼玉病院に展示される。
桐の木は消えてしまった
500円玉の表に描かれ、今春悠仁さまが進学された筑波大学の校章にもなっている桐の花。桐はタンスや下駄の材料としても知られていますね。黒目川に架かる大橋のたもと、佐川急便の横に一本の大きな桐があったが、気がつくと消えていた。葉桜の季節の頃には薄紫の花を樹木いっぱいに咲かせる美しい桐の木。左写真の樹下には桐の花を見に来た人々が写っている。右は散った花を拾い集めて写したもの。
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←対岸からの桐(2024年撮影) |
10年目にしてようやく
2015年に、「珍しい桜を挿し木して自宅で育ててきたのですが、順当に成長したので受け入れ先を探しています。どこか心当たりはないでしょうか」と読者G氏に相談され、特別の許可を得て国立埼玉病院の緑地に移植できることになった。珍しい桜とは花の中に旗のようなひらひらが見られるハタザクラ。移植して以来春夏秋冬を通して桜の様子を見守ってきたG氏にとって10年が経過したこの春、ようやく開花した桜への思いはひとしお。「病院の土壌が開花の条件に合わないのかと諦めかけていました。それだけに今年開花が確認できたことはとても大きな喜びです。旗弁はくっきり立っており、白く美しい花が見られます。来年以降、桜の開花時期が楽しみになりました」。

写真提供G氏 |
―縁ありて人生たのしー
詩人・松永伍一と関わる三人展
野口忠行(絵画)、国見修二(詩)、近藤征治(絵画)
詩人・松永伍一と少なからぬ縁のある3人による展覧会で、昭和2年頃に外国人向けの共同住宅(アパートメントハウス)として建てられた横浜市認定歴史的建造物「山手234番館」の2階ギャラリーで5/15(木)〜20(火)に開催される。内容は松永伍一遺作品(戯画絵)25点、野口のアンデス・インディオを描いた小品25点、近藤の絵画数点、国見の瞽女(ごぜ)がテーマの詩と写真等。5/17(土)の13:30からは3人に加え特別ゲストに西舘好子氏を迎え「松永伍一先生の思い出を語る」イベントを開催(入場無料)。5月といえば港の見える公園は花盛り。当地からは「元町・中華街」まで乗り換えなしで行けるので便利、駅からは歩いて7分。
090-2232-5801(国見)090-4541-4343(近藤)
※おでかけ情報参照

RAYAN(ライアン) RESTAURANT(レストラン)
〜「神戸の娘」さんより〜
ライアンレストランは、元モロッコ大使館シェフが手掛ける本格モロッコ&地中海料理のお店。リピーターの多い地元人気店で、店前にはいつも自転車が並びます。爽やかなブルー看板と白壁の温かい店内は異国情緒を感じさせ、自然と食欲をそそります。スパイス香るミートボールタジン鍋やパフォーマンスが魅力のモロッコミントティーが堪能でき、ハラル対応のためアルコールは提供していません。子連れにも安心な隠れ家です。
練馬区上石神井2-21-14
上石神井駅から5分
080-4088-9295
11:00〜15:00 17:30〜23:00
不定休(金曜のランチは定休)
※ランチには読者サービスあり
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